2016 年 107 巻 4 号 p. 239-244
(目的) 救急における泌尿器疾患の臨床統計を行った.
(方法) 2013年1月から2014年12月までの2年間に当院救急外来を受診し,泌尿器疾患と診断された1,480例を対象とした.検討項目は,性別,年齢,主訴,救急区分,受診経路,入院の有無,検査内容,診断名とした.さらに初診患者のうち,泌尿器科でフォローアップされた症例において正診率を検討した.
(結果) 泌尿器疾患は全体の2.6%であり,男女比は1.5:1であった.年齢は0歳から101歳まで(中央値53歳)であり,入院を必要とした症例は17.8%であった.診断は尿路結石(546例),膀胱炎(220例),腎盂腎炎(137例)の順に多かった.泌尿器疾患の正診率は72.3%であった.疾患別では尿路結石(91.2%),前立腺肥大症(75.0%),腎盂腎炎(71.9%)の順に高く,一方で精巣捻転(0%),泌尿器腫瘍(26.7%),前立腺炎(35.7%),精巣上体炎(35.7%)などは低かった.
(結論) 泌尿器疾患の82.2%が入院を必要としない軽症例であった.急性陰囊症の正診率が低く,救急部での診断・対応は困難であった.我々泌尿器科医も救急部と連携を図り,急性陰囊症の迅速なコンサルテーションを注意喚起することが必要である.