2018 年 109 巻 3 号 p. 150-155
症例は53歳男性.検診でPSA高値を指摘され当院泌尿器科受診となった.PSAは5.33ng/mlであり,直腸診で前立腺はやや弾性硬で軽度肥大していた.MRIで前立腺移行域に異常信号域を認め,前立腺癌を疑い経直腸的前立腺針生検を施行した.病理診断は,adenocarcinoma,Gleason score 5+5=10であった.胸腹骨盤部CT, 骨シンチグラフィで転移がないことを確認後,ロボット支援下前立腺全摘術(以下RARPと記載)を施行した.手術検体の病理診断では前立腺癌は認められず,免疫染色を追加し再検討を行った結果,MALTリンパ腫の診断であった.追加で上下部内視鏡検査,PET-CT,骨髄生検を行い全身に腫瘍性病変,リンパ節の腫脹がないことが確認され,前立腺原発のMALTリンパ腫と診断した.本症例は術後12カ月が経過したが再発はなく,外来で経過観察中である.前立腺原発のMALTリンパ腫の報告は邦文,英文問わず非常に少なく,確定診断に苦慮した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.