2019 年 110 巻 1 号 p. 1-11
(目的) 腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)の治療成績を検証する.
(対象と方法) 2007年1月から2016年12月に広島泌尿器内視鏡研究会の多施設において内分泌未治療前立腺癌に対しLRPを施行した926例を対象とし,その背景因子および周術期因子を検討した.
(結果) 全症例の年齢は69.4歳(平均値),観察期間40.3カ月,術前PSA 9.1ng/mlであった.神経温存は319例に施行し摘出病理組織はGS 6≥:174例,7:514例,≥8:232例,pT2≥:704例,pT3a:172例,pT3b:47例,pT4:3例,pN0:917例,pN1:9例,切除断端陽性率は30.0%(278例)で5年PSA非再発率は78.1%であった.経験症例数の増加に伴い有意に手術時間は短く,出血量は少なくなった.Clavien-Dindo分類IIIa度以上の周術期合併症は4.0%(37例)であった.術後PSA再発の独立した予測因子に年齢(≥70歳),治療前PSA(≥10ng/ml),生検GS(≥GS8),生検陽性コア率(≥30%),全摘標本におけるpT(≥pT3),GS(≥GS8),切除断端陽性あり,施設症例数を同定した.術後尿禁制は12カ月の時点で88%まで回復し尿禁制の予測因子に低年齢,神経温存あり,を同定した.
(結論) LRPの治療効果と適応症例の選択を明らかにした.