日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
潰瘍性大腸炎患者に発生した薬剤性両側腎結石の1例
小川 貢平阪口 和滋岡 優永本 将一黒澤 和宏浦上 慎司岡根谷 利一
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2019 年 110 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

症例は59歳女性.2015年3月肉眼的血尿,右腰部痛を主訴に当科を受診した.腹部CTにて両側腎盂に長径右18mm大,左15mm大の結石を認めた.並存疾患として潰瘍性大腸炎があり,サラゾスルファピリジン(SASP)を約30年間内服していた.尿検査所見は酸性尿で,尿酸結晶を認め,腹部単純X線では結石陰影を認めなかったことから尿酸結石を疑い,尿アルカリ化薬と尿酸生成抑制薬の投与を開始した.

しかし,治療開始3カ月後の腹部CTにて,両側の腎結石は右25mm大,左24mm大と増大傾向を示し,右腰部痛増悪を認めたため,2015年9月右腎結石に対し,経尿道的砕石術(TUL)を行った.結石は橙色で柔らかく,約半分を砕石し結石分析に提出したところ,尿酸結石ではなく薬剤性結石が疑われた.結石と共にSASP錠を提出し,赤外分光分析法にて照合したところ結石と類似していたため,SASPによる薬剤性尿路結石と診断した.

治療として潰瘍性大腸炎治療薬をSASPからメサラジンに変更し,尿アルカリ化薬の増量を行ったところ,3カ月後の腹部CTで両側腎結石消失を認めた.その後,結石予防薬の投与なしで,結石再発は認めていない.

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© 2019 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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