2025 年 116 巻 1 号 p. 1-9
(目的)開腹膀胱全摘除術(ORC)を施行した膀胱癌症例において周術期の静脈血栓塞栓症(VTE)につき検討した.
(対象と方法)当院で2020年4月から2023年10月までにORCを受けた57例を対象とした.術前はDダイマー高値の症例に,術後は全例に対して下肢静脈超音波検査を施行し深部静脈血栓症(DVT)の評価を行った.術前後のVTE発症の有無と患者背景,膀胱癌の臨床学的所見および術中因子との関連を検討した.
(結果)57例のうち,術前にVTEを認めたのは13例(22.8%)であった.そのうち肺静脈塞栓症(PE)は4例(7.0%)であった.一方,術前にVTEを認めなかった44例のうち,術直後新規にVTEを7例(15.9%)に認め,経過中にさらに4例(9.1%)に認めた.11例中3例(6.8%)でPEの併存を認めた.術前後ともに致死的となった症例はなかった.術前VTEを認めた群は認めなかった群と比較して,術前補助化学療法(NAC)を2コース以上施行した症例および女性の割合が有意に高かった.また術前後ともに,VTEを認めた症例において有意にDダイマー値が高かった.
(結論)ORC症例においてNAC施行の有無と術前のVTE発症に関連があることが示された.しかしながら早期介入にて致死的な症例を認めなかったことから,周術期のVTEスクリーニングは有用であることが示唆された.