日本泌尿器科學會雑誌
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勃起不全の診断
第2報 視床下部―脳幹系の異常について
前林 浩次今川 章夫
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1980 年 71 巻 11 号 p. 1390-1397

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抄録

生理的な勃起現象の神経学的な検討はまだ充分になされていないが, 逆説睡眠時の勃起現象の観察(REM-P, 第1報参照) において勃起が観察される場合には少なくとも脳幹部以下の勃起に関する神経系および血管系に異常はみられないと考えている.
頭部外傷後の後遺症発現に脳幹部障害が関与しているとの報告もあり, 勃起を伴う性行動の大部分は辺縁系と視床下部にて調節されており, 視床下部-脳幹系の障害による勃起不全も存在すると考えられる. このような考えのもとに, 36症例の勃起不全患者に対し, REM-Pおよび視床下部―脳幹系の検討(test of Brainstem-Function 以下BSF) を行い視床下部―脳幹系と勃起不全との関連性について検討した. なおBSFは, 視性眼振検査, 視標追跡検査および Adrenalin 負荷テストにて行つた.
その結果, 36例中26例にBSF異常例がみられ, 器質的症例では機能的症例にくらべ, BSF異常群が高率に出現した. また機能的症例のうち, 完全型勃起を呈する症例群では不完全型のものに比較し, BSF異常例の出現が少い傾向にあつた.
以上の結果より, 視床下部―脳幹系の異常の存在は勃起不全を形成しやすい準備状態の一つと考えられた.

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