抄録
症例は50歳男子. 洋服仕立て業. 1971年3月に左腎盂腫瘍の診断で, 左腎尿管全摘除術を受けている. 組織学的には移行上皮癌 grade I～IIで非浸潤性であつた. 術後4年5カ月目に膀胱腫瘍の発生を認め, 以後1978年6月まで膀胱腫瘍の頻回なる再発に対してTUR-Bt 7回, 膀胱部分切除術1回施行した. 組織学的には移行上皮癌 grade I～II で, 時に粘膜固有層への浸潤を認めた. 初回手術から8年3カ月たつた1979年6月に, 右腎盂腫瘍を発見したが, 患者が手術を拒否. 8カ月後に血尿が増強したため, リンパ節転移・遠隔転移のないことを確認し, まず右腎摘除術を行ない, 血液透析開始後に膀胱・尿道全摘除術を施行. 右腎盂腫瘍は, 組織学的に移行上皮癌 grade I～IIで非浸潤性であつた. 1980年12月現在, 血液透析開始後9カ月を経たが, 再発は認めない.
英文文献上, 21例の両側性腎盂腫瘍症例を集計し, 文献的考察を試みた.
