日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
5年以上経過した表在性膀胱腫瘍症例の分析
丸 彰夫辻 一郎斯波 光生大橋 伸生藤枝 順一郎大室 博川倉 宏一西田 亨草階 佑幸大塚 晃網野 勇阿部 弥理佐藤 昭策南 茂正鶴田 敦
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 74 巻 5 号 p. 798-807

詳細
抄録

我々は特別な再発予防が施行されていない初回治療時T1以下の表在性移行上皮腫瘍で, 5年以上を経過した94例を集計し, その経過を分析した. 94例中63例 (67%) に再発がみられており, 再発率は5年で53.2%, 10年で61.3%となる. 再発例の32%は1回のみの再発であるが, 6回以上の再発も25%にあつた.
初回治療後の再発までの期間は, 再発の23.8%が半年以内, 44.4%が1年以内と約半数が1年以内に再発したが, 20.6%は5年以後の再発であつた. 頻回再発症例の方が早期に再発しやすく, 又再発回数が多くなると, その期間も短縮する傾向を認めた. 1回目の再発で組織学的異形度の悪化したものは無いが, 初回治療後3年~14年, 平均8.3年で, 2回目の再発の10%, 3~5回目の21%, 6回以上再発の27% (全体では57例中8例14%) にG2以上への異形度の悪化を認め, このうち3例が6.5~14年で浸潤癌となり癌死した. また63例中8例, 12.7%に初回治療後3~14年, 平均7.7年で深達度の進行を認め, 1回目の再発で悪化したものは無く, 2回目の再発で18.2%, 3~5回目で18.7%, 6回以上の再発で18.7%にT2以上への深達度の悪化を認め, このうち異形度も悪化した上記3例が癌死した.
膀胱腫瘍の数と再度の関係は, 多発例で80%, 単発例で58.9%の再発率 (5%の危険率で有意差あり) であり, 初回治療法ではTURで71.2%, 部分切除で53.8%の再発率であつた. (有意差なし)

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top