日本泌尿器科學會雑誌
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Microscopic Chromocystoscopy による膀胱腫瘍の診断に関する臨床的研究
井口 厚司
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1988 年 79 巻 12 号 p. 1928-1936

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抄録

延べ57名の膀胱腫瘍患者に対し, 0.1%メチレン青の膀胱内注入による microscopic chromocys toscopy (MCC) を行った.
染色された部位は microscopic cystoscope (1~150倍率) で観察される細胞像を核の形態, 大きさ, 配列, および染色の濃淡などから5群 (group X, 0, 1, 2, 3) に分けて判定した. group X は無構造に染色されたため核の判別不能, group 0 は異型のないほとんど正常な核をもつもの, group 1から3は軽度から順に強く核異型の見られるものとした.
隆起性腫瘍では92腫瘍のうち78腫瘍が染色され, 染色率は grade 2 および3の腫瘍が grade 1の腫瘍に比べて高かった. MCCの判定と組織学的異型度との比較では, grade が高いものほど group と grade はよく一致した.
平坦な粘膜に関しては125カ所が染色され, このうち53カ所が group 1, 2, 3と判定された. この53カ所のうち47カ所 (88.7%) が上皮内癌 (41カ所), あるいは dysplasia (6カ所) であった. 一方, group 0とした66カ所では6カ所 (9.1%) にのみ上皮内病変が検出された. 非染色部位からも108カ所生検を行ない, 17カ所 (15.7%) に上皮内病変が見付かった.
この結果からMCCは隆起性腫瘍の異型度推定に有用であるぼかりでなく, 通常の膀胱鏡検査では見付けることの難しい上皮内病変の検出において非常に有用であり, 通常の chromocystoscopy において最大の欠点である false positive を少なくし, より正確な診断が可能であることがわかった.

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