日本泌尿器科學會雑誌
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前立腺癌組織における活性化ステロイドリセプターの検討
Viable cell assay と蛍光染色法による比較
梅原 次男高木 良雄熊本 悦明
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1988 年 79 巻 12 号 p. 1937-1946

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抄録

前立腺癌のホルモン依存性を検討する目的で, 手術時に得られた新鮮な癌組織における活性化アンドロゲンリセプター (ARa) 及び活性化エストロゲンリセプター (ERa) を Viable cell assay にて測定した. ARa値と従来行われてきたDCC法との比較を行うと共に mibolerone-FITC による蛍光染色法によるAR測定との結果も比較検討した. 結果は以下の如くであった.
1) 従来行われてきた生化学的方法と Viable cell assay 法との比較をARにつき検討した結果では, cytosol 中のARは生化学的方法では stage, grade 共進行するにつれ, 上昇傾向を認めたが, viable cell assay 方法では逆に stage, grade の進行と共に下降傾向を認めた.
2) 108例の前立腺癌に於けるARaは stage B, C, D1でそれぞれ266±49 (n=54), 248±51 (n=30), 151±42 (n=24) (fmol/mgDNA, Mean±S.E.以下同様) であった. 又 grade 2, 3, 4の順に239±45(n=47), 235±43(n=56), 210±80(n=5)であった.
3) 70例の前立腺癌におけるERaは stage B, C, D1の順に1,229±256(n=37), 635±221(n=16), 414±91(n=17) であり, 又 grade 2, 3, 4の値はそれぞれ1,241±285(n=28), 684±175(n=37), 171±140(n=5)であり, stage B, D1間及び grade 2, 4間には有意な差 (p<0.05) を認めた. 以上より前立腺癌組織中のARa, ERaは共に stage や grade が高くなるにつれ, 低下する傾向を認め, それと呼応して癌組織全体のホルモン依存性は低下してゆくものと考えられた.
4) Viable cell assay 法と染色法との比較では, 26例中17例 (65%) に両者の判定が一致したが, 8例 (31%) は, 染色法で陽性であったが, ARaは陰性であった. これは, 染色法によるARの中には non functional なARが存在している可能性がある為と考えられた.

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