日本泌尿器科學會雑誌
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尿路結石の構築における有機マトリックスの役割
岩田 英信飯尾 昭三阿部 雄吉亀井 修西尾 俊治松本 充司竹内 正文若月 晶
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1988 年 79 巻 12 号 p. 1969-1975

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抄録

複数の尿路結石を有していた14人の患者より摘出した小結石の構築について, 特に結晶と有機マトリックスとの相互関係を中心に観察した. 走査型電子顕微鏡による結石割面の観察では, 結晶成分の違いに無関係にすべての結石は無方向性に凝集した結晶からなる単一または複数の結石核を有していた. これらの結晶の間には自由空間が存在するため結石核は容易に同定された. この結石核は密に詰まった結晶群からなる層状の外層に包まれていた. 外層の層間には時に自由空間が存在したが, この空間には決まって無方向性の結晶群が認められた. 透過型電子顕微鏡による観察では, 結石外層の有機マトリックスはそれ自体が層構造をなしており, 結晶間隙を埋めるような形で存在していた.
これらの観察結果からふたつの結石成長メカニズムが考えられた. 一番目は別の場所で析出した結晶が結石表面に付着することによるものである. この場合結晶配列は無方向性となるため結晶間隙に自由空間が生じ結石構造は虚弱である. 二番目は結石表面に付着するゲル状態の有機マトリックスの中で結晶が成長することによるものである. この成長メカニズムは真珠の成長メカニズムに酷似している. このメカニズムによる結石成長では結晶間隙に自由空間が生じないため結石構造は強固であり, 結石化の本体はこのような結晶と有機マトリックスの相互関係にあると考えられた.

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