1988 年 79 巻 12 号 p. 2002-2011
1978年1月~1986年12月の9年間にマイクロカプセル化学塞栓療法を施行した膀胱癌患者100例 (T1 16, T2 18, T3 28, T4-M1 38) と, 同期間に本法を施行しなかった膀胱癌患者102例 (対照群: T1 52, T2 13, T3 24, T4-M1 13) の治療成績を比較し, 膀胱癌治療における化学塞栓療法の位置づけを試みた.
1~3回 (中央値1回) のマイクロカプセル化学塞栓療法後の他覚的腫瘍縮小 (縮小率50%以上) は評価可能79例中43例 (55%) にみられ, 5例では完全消失が認められた. また本法によると考えられる, 重篤な副作用ならびに合併症は認められなかった.
手術の有無によらない5年生存率はマイクロカプセル群ではT194%, T2-358%, T4-M15%, 対照群ではT183%, T2-337%, T4-M115%で, 有意差はないがT2-3の成績は対照群に比較して良好であった.
治癒的手術を施行されたT2-3はマイクロカプセル群38例 (T2 18, T3 20), 対照群33例 (T2 12, T3 21) であった. 手術はマイクロカプセル群でTUR 15例, PCX 5例ならびにTCX 18例, 対照群でTUR19例, PCX 2例ならびにTCX 12例であった. これらの5年非再発率と生存率はマイクロカプセル群ではそれぞれ59%, 66%, 対照群では32%, 42%で有意 (p<0.05) にマイクロカプセル群に再発防止効果と延命効果を認めた.
以上から化学塞栓療法は, 局所浸潤膀胱癌の手術に対する有力な補助療法と考えられた.