日本泌尿器科学会雑誌
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海綿腎の臨床的検討
尿路結石形成に関する代謝面からの検討
木下 博之
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1990 年 81 巻 3 号 p. 372-379

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抄録

1974年1月から1985年12月までの12年間に川崎医科大学泌尿器科を受診し, 尿路結石症の診断のもとに点滴静注腎盂造影を施行した881例中, 海綿腎と診断された者は, 男性19例, 女性19例の計38例で, その頻度は4.3%であった. 年齢分布は16~76歳に亘り, 50歳代が最も多く, 一般の尿路結石症の好発年齢と一致した. 尿所見は, 血尿を認めるものが52.6%, 尿路感染症を証明しえたのは4例 (10.5%) であった. 腎機能検査は, PSP試験, 24時間内因性クレアチニン・クリアランス (Ccr) ではほとんどの症例が正常であったが, 濃縮試験では半数に濃縮力の低下がみられ, 結石による二次的変化と考えられた. 病変部位は, 38例中32例 (84.2%) が両側汎発性でありまた, 38例中26例 (68.4%) が両側腎尿管結石を有していた. 結石代謝は, 尿中燐排泄量の軽度増加, クエン酸排泄量の軽度低下の傾向がみられ, 結石形成の誘因と考えられた. 結石成分は, 蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムの混合結石が28結石中13結石 (46.4%) と多くみられたが, 一般の尿路結石症例と比較すると, 燐酸カルシウム結石の頻度が若干高かった. 酸負荷試験では14例中5例 (35.7%) に尿酸性化障害がみられたが, 障害例の尿中カルシウム排泄量は正常であり, 結石形成には尿の酸性化障害がもたらすアルカリ尿, 尿中カルシウム, 燐排泄の増加およびクエン酸排泄の低下など多くの因子が関与するものと考えられた.

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