日本泌尿器科学会雑誌
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腎細胞癌におけるクラスII主要組織適合抗原
免疫組織学的検討及び腎癌細胞株におけるインターフェロンによる発現の誘導
冨田 善彦
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1990 年 81 巻 7 号 p. 1079-1086

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抄録

主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) の産物であるMHC抗原は免疫反応において重要な役割を果たしている. このうちクラスII抗原は抗原提示細胞がCD4陽性ヘルパーT細胞に抗原を提示する際に拘束因子として働く, また宿主と移植片のクラスII抗原の違いは移植片の拒絶の原因となることも知られている. さらに, 実験腫瘍の系では腫瘍細胞上でのクラスII抗原の発現が免疫原性の増強につながることが報告されている. 腎細胞癌 (RCC) と宿主の免疫反応の関係を検討するため, 30例のRCCと腎癌細胞株に対し, クラスII MHC抗原の発現を検討した. RCCに対する免疫組織学的検索の結果, 正常尿細管上皮にはみられないクラスII抗原陽性細胞が30例中29例に種々の程度でみられた. またHLA-DR陽性細胞が最も多く, ついでDP, DQの順であつた. 浸潤リンパ球はT細胞がほとんどであり, DPまたはDQ陽性の腫瘍細胞が多い症例でその数が多い傾向にあった. フローサイトメトリーによる解析で検討した3種の腎癌細胞株はクラスII抗原陰性であったが, インターフェロン (IFN)γによる処理後に, KRC/YとACHNが濃度依存性にHLA-DR陽性となり, KRC/Yの少数の細胞ではDPも陽性となった. なお, INFαでは効果は見られなかった. 以上の結果からRCC上のMHCクラスII抗原は治療目的で投与されたIFNや浸潤リンパ球から産成されたIFNにより修飾され, 宿主の免疫反応に影響を与えていることが考えられる.

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