日本泌尿器科学会雑誌
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蓄尿排尿機能に対するチロプラミドの効果とその作用機序について
森田 隆安藤 正夫平野 繁堂北 忍近藤 俊土田 正義
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1992 年 83 巻 11 号 p. 1835-1840

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抄録

チロジン誘導体であるチロプラミドは消化器系の平滑筋に対して鎮痙作用を有し, その作用はcAMPを介することが示唆されている. そこで下部尿路平滑筋の機能に対するチロプラミドの作用を検討した. in vitro 動物実験として, 膀胱尿道平滑筋の収縮に対するチロプラミドの効果と, チロプラミド投与時のcAMP, cGMPの含有量を膀胱, 尿道と消化器平滑筋で測定した. 臨床実験として, 5名の健常人ボランティアと5名の神経因性膀胱患者にチロプラミド1日300mgを2週間経口投与し, 投与前後で排尿力学的検査を行った. チロプラミドは膀胱尿道平滑筋の収縮を有意に抑制したが, 抑制効果は膀胱で特に著明であった. チロプラミドは膀胱においてcAMP含有量を著明に増加させたが, 10-6M以上の濃度ではcGMP含有量をも増加させた. チロプラミドは尿道, 胃, 腸平滑筋のcGMPを軽度に増加させたが, その増加の程度は膀胱に比較して有意に小さかった. チロプラミドを経口投与された神経性膀胱患者では, 有意に初発尿意量, 最大膀胱容量が増加したが残尿は増えなかった. 健常人では有意な排尿パラメーターの変化は認められなかった. これらの事実は, チロプラミドはcAMPを介して膀胱平滑筋を弛緩させ, 膀胱容量を増やす可能性を示唆している.

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