日本泌尿器科学会雑誌
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根治的前立腺全摘術を行ったPSA20ng/ml以上の前立腺癌症例の検討
有働 和馬大坪 智志坂本 直孝井口 厚司
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2007 年 98 巻 5 号 p. 685-690

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抄録

(目的) PSA20ng/ml以上で臨床的に転移を認めない前立腺癌症例の臨床的・組織学的な特徴, 予後について検討し, 前立腺全摘術による治療が意義あるものか検討した.
(対象と方法) 根治的前立腺全摘術を施行した前立腺癌症例のうちPSA20ng/ml以上であった21症例について, 術前臨床所見と全摘標本の病理学的所見を検討した.
(結果) 術前PSA値は21~65ng/ml, 中央値27ng/mlであった. 主腫瘍が70%以上存在する部位で辺縁領域 (PZ) 癌と移行領域 (TZ) 癌に分類しそれぞれ10例ずつであった. PZ癌群では組織学的リンパ節転移が2例, 精嚢浸潤が8例, 被膜外浸潤が全例, 外科的切除縁陽性が7例であった. TZ癌群ではリンパ節転移, 精嚢浸潤は1例もなく, 被膜外浸潤が5例, 外科的切除縁陽性が6例であった. 術前検査ではPZ癌群は全例直腸診, TRUS陽性であったが, TZ癌群では直腸診およびTRUS所見は乏しかった. 年齢, PSA値, 癌体積, グリソンスコアには差はなかった. PSA再発はPZ癌群では9例, TZ癌群では2例であった.
(結語) PSA20ng/ml以上の症例ではPZ癌であれば手術療法のみでの根治は難しいと考えられたが, TZ癌であれば比較的良好な成績が得られた. 直腸診・TRUS所見が乏しければTZ癌を積極的に疑うことが重要であり, また根治的前立腺全摘術も根治的治療の一つであると考えられた.

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