日本泌尿器科学会雑誌
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国際前立腺症状スコア (IPSS) に「排尿後尿滴下」を加えた独自の問診票による下部尿路症状の調査
花井 禎松本 成史清水 信貴植村 天受杉山 高秀
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2008 年 99 巻 7 号 p. 723-728

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抄録

(緒言) LUTSのなかで現在まであまり注目されていない項目のひとつに, 排尿後尿滴下 (PMD) がある. QOLに大きな影響を与える可能性があるが, IPSSの項目に含まれていないことなどが影響し, 程度や頻度, QOLとの関連など不明な点が多い. そこで, 独自で作成した問診表を用いて調査した.
(対象と方法) 2006年6月~2007年3月に当科に来院した初診患者621名 (男性394名:女性227名) を対象とした. 独自で作成したIPSS+PMD/QOL質問表に初診時に自己記入してもらい, 回答を得た.
(結果) PMDスコアは男性では1.2±1.7, 女性では0.6±12であり, 男性は女性に比べ有意に高かった. 男性では, 50代からPMDスコアは高くなり70代でピークとなっていた. 女性では, 20代以降では大きな差は無かった. 男性ではBPH患者, 女性では腹圧性尿失禁の患者でPMDスコアが高かった. 最もPMDスコアが高かった疾患はBPHであった. PMDスコアは, LUTS群は1.59±1.90, 非LUTS群は0.36±0.90であり有意にLUTS群で高かった. LUTS群の男性とBPH患者では, QOLスコァとPMDスコアに正の相関を認めた.
(考察) 泌尿器科外来初診患者621例を対象にPMDの自覚症状について検討した. 今回の検討によりPMDは, 若年者や女性でもPMDを経験すること, PMDは, LUTS症例 (特にBPH患者) においてスコアが高くQOLを損ねている可能性があること, などが明らかとなった.
今後, PMDのより詳細な病態の把握が必要と思われた.

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