2012 年 33 巻 1 号 p. 14-22
Gabor刺激は空間領域と空間周波数領域において独立に変数を調整することができるため,視覚心理物理学実験や電気生理学実験に広く用いられている。しかし,Gabor刺激はコントラストを変えると知覚される大きさが変化することに留意しなければならないことが一般的に知られている。本研究ではこの性質をより詳細に定量的に明らかにすることを目的とし,Gabor刺激(σ=0.625°のガウス関数,搬送波の空間周波数:8 cpd)の大きさ知覚弁別の増分閾と減分閾を刺激コントラスト(10.0~80.0%)と搬送波の方位(0,45,90,135°)の関数として心理物理学的に測定した。その結果,参照刺激のコントラストに対する減分閾の関数は増分閾の関数に比べ,傾きが急であった。これは,Gabor刺激の大きさ知覚は刺激のコントラストが低い場合と高い場合では異なり,大きさ知覚とコントラストの間に非対称な相互作用があることを示唆している。