視覚の科学
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学会印象記
23rd International Visual Field & Imaging Symposiumに参加して
多々良 俊哉前田 史篤
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2018 年 39 巻 3 号 p. 83-84

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私は2018年5月9日から13日に石川県立音楽堂で合同学会として開催された23rd International Visual Field & Imaging Symposium(IPS),第7回日本視野学会(JPS)に参加しました。IPSが日本で開催されたのは1978年の東京,1992年の京都,2008年の奈良に次いで今回が4回目となります。金沢は歴史情緒を感じる古き良き街並みが残っている一方,金沢駅の周辺では近代的な建造物も楽しむことができます。海外からの参加者は,過去に開催された3都市とまた一味違った日本の風情を感じることが出来たと思います。

私は視能訓練士となり4年目にして,初めての国際学会への参加となりました。IPSでは初日の夜に金沢城内でWelcome Partyが開かれました。国際学会のパーティということで最初はとても緊張していましたが,その雰囲気は非常にアットホームであることに驚きました。今回のIPSの参加者は298名,その多くは常連であり,皆2年に一度の再会を楽しんでいました。IPSのこの気取らない雰囲気は,翌日以降の学会会場内でも同様であり,日本の学会とは違った趣を感じました。

視野・画像の学会ということで新しい視野計の開発や光干渉断層計による画像解析,特に構造と機能の乖離に関連した発表が多数ありました。印象に残っているのは,コンピュータによる視野分析の先駆者であるHeijlの講演です。今日の眼科医療では一般的に用いられているSITAやProbability Mapsの開発,さらにハンフリー視野計の新たな機能として,SITA-Fasterに関する内容を聞くことが出来ました。SITA-FasterはSITA-Fastからさらに30%の時間短縮となり,24-2を約2分で測定できるとのお話でした。またAulhorn Educational Lectureでは視野研究の先駆者であるAulhornの業績を振り返りながら,視野の歴史から最新の知見を学ぶことができました。

IPSの最終日にはClosing Banquetがありました。IPSでは恒例となっているようですが,参加者が国別に分かれ,ステージ上で母国の歌などを披露しました。日本チームは「上を向いて歩こう」の合唱を行った後,スーパーマリオの出し物で会場を盛り上げました。

特筆すべきこととして,この度のIPS総会にて九州保健福祉大学の可児一孝教授(滋賀医大名誉教授)が名誉会員として表彰されました。IPSは1974年にフランスのマルセイユで第一回大会が開催され,今年の金沢開催が第23回目となりました。可児教授はそのIPSの全てに世界で唯一,全出席されているレジェンド的存在です。IPSのwebサイトには,全ての大会のabstract,そして当時を物語る貴重な写真の数々がupされています。それらは可児教授から提供されたデータであると聞きました。まさにライフワークとして視野の研究に取り組み,その成果を世界に発信し続ける可児教授のバイタリティに私は強い刺激を受けました。

IPSそして合同開催されたJPSの両学会とも内容が濃く,非常に充実した5日間を過ごすことができました。両方の学会に参加できたことは良い点でもあるのですが,日程的にどうしても重複する部分が出てしまい,聞きたいセッションが同時刻で重なっていたことは残念でした。IPSのポスター発表は,ショートプレゼンテーションがあることが特徴です。興味深い演題についてはポスター前で具体的なディスカッションがあると聞いていましたが,今年はそれが限定的であったことを常連の参加者から聞きました。

同時通訳がなかったので内容が理解できるか不安でしたが,nativeも意識して分かりやすい英語を使ってくれるので,スライドがあれば大まかな内容は理解できました。それでもディスカッションになると一気に英語の難易度があがります。日本人の発表者が困っているときは,所属を問わず日本人が助けあっている様子にこの学会の良さを感じました。

2020年はカリフォルニアのバークレーで第24回のIPSが開催されます。次回は私も演題を持って参加し,ディスカッションに加わりたいと思います。

写真1

IPSとJPSを彩る象徴的な看板

写真2

Closing Banquetにて可児 一孝 教授(前列中央)を囲んで

 
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