Japanese Journal of Visual Science
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Review Articles
Current Status of Research on the Functional Vision Score
Yoshimune HiratsukaJunko Kamo
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2019 Volume 40 Issue 1 Pages 1-6

Details
Abstract

Functional vision score(FVS)に関する研究についてレビューを行った。国内外から52の論文が発表されており,うち35が原著論文であった。研究内容は①FVS関連指標の妥当性検証,②FVSを利用した視機能評価,③FVSとその他の指標との関連の3つに類型された。明かになったこととしては,FVSは,①視機能を1つのスコアに数値化可能で視機能評価に有用,②検者間/内信頼性が高い,③視覚関連QOLと相関が高い,④患者家族など医療関係者以外の人に理解しやすい,⑤視覚障害基準などに利用しやすいなどが挙げられた。

背景

Functional Visionとは,「眼」のレベルで達成される機能であるVisual functionとは違い,「眼」を超えて,より実用的な機能といえる「人」のレベルで達成される機能を意味する1)。視力障害を日常生活の活動(ADL,読書能力,方向性や移動性など)における個人の能力観点から定義するときに使用され,視力のように各々の眼の状態の評価に用いるものではない。

Functional Vision Score(FVS)とは,このfunctional visionを点数化したものである。視力と視野の状態をクリアな基準でスコア化し統合するために考案された方法であり,1994年にA. Colenbranderによって初めて提唱され2),2002年にシドニーで行われたWorld Ophthalmology Congressの中のICOカンファランスで国際基準として採択された3)。米国医学会の身体障害者基準ガイド2001年第5版,2007年第6版に掲載され4),このガイドは,現在十数カ国で様々な用途で使用されている。

FVSは,0~100の点数で示され,100が正常,0が視機能が完全に失われた状態を表す。従来困難であった,視力と視野の状態を1つのスコアに統合し数値化するものであり,日常臨床における視機能の総合評価や,臨床研究にも有用である。また,判定基準が明確なため,結果の再現性が高く,視覚関連QOLとの相関も高い5)

FVSの計算法の詳細は他に譲るが,視力の評価であるFunctional Acuity Score(FAS)と,視野の評価であるFunctional Field Score(FFS)をそれぞれ求め,それらを掛け合わせて算出する。スコアは片眼および両眼の状態でそれぞれ測定され,計算時には両眼60%,片眼20%ずつ加重平均される。視野の評価はGoldmann視野計III/4e指標で行われる。

FVSに関連した報告は様々である。海外では,2003年にFuhrらによって視覚関連QOLとの関連が示された5) 後,いくつかの報告がある。本邦では,2010年に宇田川ら6) が,FFSの算出過程で使用したVisual Field ScoreとHFA24-2のパラメータであるMD,VFIとの間に有意な正の相関があることを示して以来,増加している。本研究では,FVSに関連した研究について,国際的な研究動向をふまえ,我が国における研究報告の状況の把握と知見の整理を行い,今後の関連研究に資するために,系統的レビューを行った。

方法

1. 論文の抽出

データベース検索は平成30年12月6日の時点で行われた。文献検索の二次資料データベースには,医学中央雑誌(医中誌)と米国国立医学図書館(National Library of Medicine,NLM)が提供する文献データベース(PubMed)を用いた。医中誌の検索式は,("functional vision score"/AL or "functional field score"/AL or "functional acuity score"/AL) and (PT=会議録除く),PubMedにおいてはfunctional[All Fields] AND ("vision,ocular"[MeSH Terms] OR ("vision"[All Fields] AND "ocular"[All Fields]) OR "ocular vision"[All Fields] OR "vision"[All Fields]) AND score[All Fields] AND functional[All Fields] AND field[All Fields] AND score[All Fields] AND functional[All Fields] AND acuity[All Fields] AND score[All Fields]を用いた。

またハンドサーチも追加した。対象雑誌は,ロービジョンや視能訓練に関連する研究を多く収載した3誌(日本ロービジョン学会誌,日本視能訓練士協会誌,日本の眼科)とした。さらに,FVS研究会のメンバーからの情報提供により極力多くの論文を抽出した。

続いて,論文のスクリーニングを以下の採択基準に基づき実施した。即ち,①原著・総説・解説であることと(会議録は除外),②FVS,FFS,およびFASのいずれかを用いている,もしくは言及していること,③1994~2018年に発表されたもの,とした。

1次スクリーニングではデータベース検索により抽出された論文について,表題及び抄録から,複数データベース間で重複した論文及び採択基準に合致しない論文を除外した。2次スクリーニングでは論文のアブストラクトを精読し,1次スクリーニングと同様に論文を除外し,最終採択論文を決定した。

本研究は既存資料のみを用いる研究のため倫理審査対象には該当しない。

結果

1. 論文の抽出について

医中誌では26論文が抽出され全てが採用となった。更にハンドサーチやFVS研究会からの情報提供により,計41件の国内論文が採択された。一方,PubMedでは37論文が抽出され,9論文が採用となった。また,FVS研究会からの情報提供により,計17論文が採用となった。医中誌とPubMedで重複したものを除くと合計52の論文が最終的に採用された。各論文の詳細を付表1に示した。

2. 研究の国内外,原著/総説の内訳

52論文のうち,海外論文が14論文,国内論文が38論文であった。また,52論文のうち原著論文が35(海外9,国内26),総説論文が17論文(海外5,国内12)であった。

3. 刊行年と件数及び研究実施国

海外論文は1994年に総説が発刊され,2003年に最初の原著論文5)が発刊されていた。研究実施国の内訳は,アメリカ8,カナダ1,オランダ4,フィンランド1,カナダ1,韓国2であった。国内論文は最初の総説論文が2007年に発刊され7),2010年に最初の原著論文6)が発刊されていた。原著論文は近年増加傾向であった。

4. 研究デザイン

原著論文における研究デザインは国内外を問わず,ほとんどがケースシリーズであった。また国内では5件がケースリポートだった。

5. 対象者及び解析対象者数

海外論文の対象者は30~40歳代と比較的若年者が多く,サンプル数は16~144で,100例以上の比較的大規模の研究は3件のみであった。国内論文の対象者は60~70歳代を対象にしたものが多く,サンプル数は1例から501例であり,100例以上の研究が6件あった。

6. FVS関連指標(FVS,FAS,FFS)の研究利用

FVS関連指標の研究利用は大きく3つに類型された。1番目はFVS関連指標測定の妥当性の検証,2番目はFVSを利用した眼科患者の視機能評価,3番目はFVSとその他の指標との関連評価である。

1番目の例としては,FFS測定の検者間/内信頼性8)を調べたものや,異なる視野測定法で得られたFFSについての検討9,10),国内においても正常者でFFSが100点となるかの検証11)などが挙げられた。

2番目の患者の視機能評価としては,FVSにより視機能を1つのスコアに数値化することが可能であり,現状の視機能評価12,13),介入の効果14),年齢や経過年数での変化を示す1517点で有用という報告が多かった。また,スコアから得られる視覚喪失レベルと生活状態や必要とされるケアや病状との関連18,19)などが報告されていた。

3番目の他の指標との関連では,眼科領域における患者報告アウトカムとして最も一般的なVFQ25との関連を検討したものが多かった5,12,13,20。また日本における身体障害者基準との比較も多い17,2123。FFSについてはハンフリー視野計の結果と比較したもの10,13,21が多かった。

7. 研究からわかったこと

1) 視機能を1つのスコアに集約化することが可能で視機能評価に有用

FVSを利用して視機能の変化を数値で示したり,医療介入の効果を測定した研究や,うつや不安などのスケールとの関連を検討した研究が行われていた。

PenningsらはUsher症候群59例を対象にその年齢とFVSとの関連の検討を行った。横断研究の重回帰分析の結果,FVSは年間1.5%程度悪化している可能性が示唆された15)。巣山らは2回以上FVSを測定できた網膜色素変性(RP)38例について検討を行い平均55ヵ月の経過でFVSが53.3から41.4に悪化していることを示した17)。また,Somaniらは視野10度以内のRP患者に眼鏡貼り付け型プリズムを1ヶ月間装用させFFSが23から27に改善したことを報告している14)。SainohiraらはRP患者112人においてFVSとHADS-D(抑うつのスケール)には有意な相関がある(r = −0.38, p < 0.01)ことを示した24)。以上のようにFVSは視機能状態を1つのスコアとして扱えるために臨床研究におけるアウトカム指標として有用性が高い。研究対象疾病としては,他に緑内障,加齢黄斑変性,糖尿病網膜症,等があったが,特にRPの評価に有用という報告が多かった12,17,24。また緑内障の視野評価にもFFSが有用という報告が多かった6,25,26。FVSにより現状の視機能をスコア化することで必要とされるケアを見積もりやすくなるという報告もあった。具体的には,ロービジョンケアの選定がし易くなった27),学校における歩行や体育,情報などの教科での状態整理が可能となり,個別の指導計画がしやすくなった28)などの報告がみられた。

2) 検者間/内信頼性が高い

FVSはFASとFFSで構成される。FASは視力値から変換されるため検者間/内信頼性は問題にならない。一方,FFSは手作業によるスコアリングが必要となるために,検者間/内信頼性が問題となる。Langelaanら8) は62例のサンプルをもとに,FFSの検者間/内信頼性について検討した。結果は,級内相関係数がGoldmannのisopter III-4eで測定したサンプル30例において,Intrarater(observation 1–observation 2)が0.98,Interrater(rater 1–rater 2)が0.99であった。isopter V-4eで測定した58例においては,Intrarater(observation 1–observation 2)が0.99,Interrater(rater 1–rater 2)が0.99であった。FVSの検者間/内信頼性は高いといえる。

3) 視覚関連QOLとの関連が高い

VFQ25との関連が高いという報告は国内外を問わず多い。Fuhrらは200人(平均年齢70.9歳,よい方の眼の視力が0.4以下または片眼の視野障害があり)の眼科患者におけるFVSとVFQ25との関連について検討した。FVSは眼の痛み以外の全サブスケールと有意に相関があり,特に全体的な見え方(r = 0.72)や遠くの見え方(r = 0.67)との相関が高かった。またVFQ25の複合スコアとの相関係数は0.61(p < 0.001)で,平均視力(r = 0.46)や平均視野(良い眼の最も広い直径)(r = 0.45)及びFAS(r = 0.50),FFS(r = 0.51)よりも高い相関を示した5)。Seoらは108人(平均年齢37.6歳)のRP患者においてFVSとVFQ25との関連について検討した。VFQ25の複合スコアとの相関係数は0.58(p < 0.001),良い方の眼の視力平均視力(r = 0.60)やFAS(r = 0.60)と同等,FFS(r = 0.44)よりも高い相関を示した12)

VFQ25とFFSの関連についての研究も多い。加茂らは運転免許を取得している開放隅角緑内障患者72例においてFFSとVFQ25との関連について検討した。FFSはVFQ25の総合スコアやほとんどの下位尺度とr = 0.3程度の弱い有意な相関を認めた26)。Yanagisawaらは,50人の日本人患者(緑内障40%,加齢黄斑変性30%,糖尿病網膜症8%,その他22%)を対象にVFQ25とFFSの関連について検討している。FFSはVFQ25の総合スコアと有意ではないものの弱い相関(r = 0.29, p = 0.05)を示した。また,下位尺度の中の周辺視野と有意な関連を示した(r = 0.31, p = 0.03)13)

4) 患者や家族,関係者など医療関係者以外の人に視機能の状態を伝えやすい

鶴岡らは身体障害者等級には該当しない13歳の先天無虹彩症例について,FVSを利用することで学校側に障害の程度をわかりやすく説明することが可能で,結果,学校側から高校受験に備え,拡大教科書を利用する提案を得るに至った経過を報告している19)。また,村上らは,脳梗塞後の半盲で,自動車運転の可否判断が課題となった症例についてFVSによる評価は医学的判断の後ろ盾となる可能性について述べている29)。視機能が100点満点のうち何点程度の状態というような説明を行うことで,医療関係者以外にも患者の視機能の状態を大まかに把握することが可能であり,一般に受け入れられやすい指標であるといえる。

5) 身体障害者基準など視覚障害の基準設定に利用しやすい

瀬戸らは,視覚障害による身体障害者に該当する42例を対象にFVSと障害等級を比較した。各障害等級に相当するFVS値は1級0~20,2級29~60,3級7~62,4級8~28,5級12~74であり,障害等級とFVS間には有意な相関が認められた(r = 0.47,p = 0.001)22)。一方,FVSをもとにAMA分類と視覚喪失の国際分類を用いて分類すると同じ等級内でも異なるクラスに分類される症例があり,特にばらつきが多かったのが2級と5級であった。南らは,視覚障害による身体障害者に該当する150例を対象に同様の研究を行っている。各障害等級に相当するFVS値は1級0~17,2級0~54,3級1~77,4級10~50,5級10~85であり,障害等級とFVS間には有意な相関が認められた(r = 0.70,p < 0.01)23)。FVSの中央値は3級(39)と4級(26)で逆転していた。日本における従来の障害者等級評価は,左右の視力の和で判定されるため,視野を含めた総合判定でも十分な評価を得られていない症例があり,生活の不自由さを反映できていないのではと述べられている23)。また,加茂らは現行の身障者基準で同名半盲による5級(10例)と輪状暗点を示す2級の緑内障患者(9例)についてFFSとFVSによる評価を行った。結果,5級と2級でFFSやFVSがほぼ同等の例がみられたと報告している30)。さらに,鶴岡らは,身体障害者基準には該当しないが,就労についてロービジョンケアが必要とされた症例について,FVSによって患者の不自由さを正当に評価可能であったと述べている31)。FVSは身体障害者基準を判定する上での視機能評価法として有用である可能性が高い。実際,韓国ではFVSをそのまま導入するのではなく,自国用に改変して運用している。オプションは米国よりも細かく定められ,流涙や眼瞼の異常などでもスコアが変化するよう設定されている32)。今後の日本の制度を考えていく上でも参考になる。

6) FVSの問題点

先ず第1にFFSの測定にGoldmann III4/eでの測定が求められることである。しかしながら,この点に関しては,V/4eで測定しても補正可能との報告がある9)。一方で自動視野計によるプログラムも存在する。本プログラムは自動視野計にはプレインストールされていないが,カスタムプログラムとして存在する。III4/eで測定した場合と比較し,FVSでr = 0.97,VFSでr = 0.92,FFSでr = 0.93であり,測定時間は両眼で約13分と報告されている10)。また,通常の眼科診療に追加で必要とされる手続きとしては,両眼開放視力の測定や,Colenbranderグリッドへの落とし込みがある。特にグリッドへの落とし込みは慣れないとやや煩雑な作業となる。特に,右左それぞれ測定されたグリッドを両眼での見え方に合成する部分に工夫が必要となる。初心者で30分32)とされるが,慣れると10分程度で作業は完了する。また,簡便に評価可能なExcelシート(Colenbrander_Endo_Kamoシート)も開発されており,より短い時間での評価が可能になっている。

考按

本研究ではFVSに関する現状の研究ついてレビューを行った。国内外から52の論文が発表されており,うち原著論文が35あった。海外論文は対象者が比較的若年者が多く,サンプル数は少なめであった。一方,国内論文の対象者は60~70歳代が多く,サンプル数が多い傾向にあった。また研究デザインはほとんどがケースシリーズ研究であった。研究内容は大きく3つに類型が可能であり,

①FVS関連指標の妥当性の検証

②FVSを利用した眼科患者の視機能評価

③FVSとその他の指標との関連評価

となっていた。

多くの研究から明かになったこととしては,FVSは

①視機能を1つのスコアに数値化することが可能であり視機能評価に有用

②検者間/内信頼性が高い

③視覚関連QOLと相関が高い

④患者や家族,関係者など医療関係者以外の人に理解しやすい

⑤身体障害者基準などの視覚障害の基準設定に利用しやすい

などが挙げられた。

今までFVS関連の研究をまとめたリビューは存在しない。加茂は2011年に「日本の眼科」誌上で6回にわたりFVSに関する総合的な解説を行っている3338。その内容は包括的であり,具体的な測定法の詳細から,視覚障害評価法の米国や英国との違い,FVSを用いた評価がWhole Person Impairment(WPI:一個人に対する障害のインパクト)の評価にもつながることを示している。また,身体障害者基準の判定に利用することが可能となれば,同時に全国的なデータ入力システムを構築することで,眼科医療機関からロービジョンケアへの連結や全国の視覚障害原因疾患統計の作成にも役立つ可能性について言及している。本研究では,原著論文を中心に,FVSが視機能評価において多くの面で優れた評価指標であることを示した。特に視機能を1つのスコアに数値化することが可能であることが,臨床研究に利用しやすい指標であることがわかった。また,検者間/内信頼性が高いことから,従来の身体障害者基準で問題となっていた求心性視野狭窄の評価など検者によって違いが指摘されている点についても,利点があることがわかった。1つのスコアであるために,患者や家族,関係者など医療関係者以外の人に理解しやすい点も非常に重要なポイントといえよう。

本研究の限界としては,ハンドサーチの対象として見落とした雑誌がある可能性があり,十分網羅的であったか否かは不明である。論文の採択及び内容のまとめについては1名で行ったが,主観的判断等のバイアスの可能性は否定できない。また,レビューで採択した研究結果は,発表バイアスの影響を受けている可能性がある。

結論

FVSは視力と視野の状態をクリアな基準でスコア化し統合した指標であり,視機能評価に非常に有用である。また,患者や家族,関係者など医療関係者以外の人に理解しやすく,臨床研究にも使用しやすい。身体障害者基準などの視覚障害基準を判定する上での視機能評価法としても有用である可能性が高い。

謝辞

本稿の作成にあたってはFVS研究会のメンバーらに多大な御協力を頂いた。加茂純子,村上美紀,鶴岡三惠子,斉之平真弓,田辺直彦,小野峰子,瀬戸寛子,原田亮,宇田川さち子,以上の方々にここで改めて感謝申し上げる。

本研究は,厚労科学研究「視機能障害認定のあり方に関する研究H30-感覚器-指定-001」の助成を受けたものである。

文献
 
© 2019 The Japanese Society of Ophthalmological Optics
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