過大な両眼網膜像差は複視を生じ,奥行きの印象を弱めることが知られているが,最近の研究により,刺激の運動によって非常に大きな網膜像差に対しても鮮明な奥行きが知覚されることが明らかになった。ここでは,1次元DoG刺激を用いて奥行き知覚に必要なコントラスト閾を測定した実験を紹介し,大きな網膜像差を検出するメカニズムの時空間特性について議論する。DoGの空間定数σを0.11~2.3 degの範囲で変化させた。刺激の運動が非常に大きな網膜像差による奥行き知覚を促進する効果は中程度のσのときに特に顕著であった。これは,刺激の空間周波数ではなく大きさに同調した網膜像差検出器によって大きな網膜像差が処理されていることを示唆している。