Japanese Journal of Visual Science
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2020 Volume 41 Issue 3 Pages 48-49

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本の紹介

小切開創白内障手術 大鹿 哲郎(著)

①医師・視能訓練士・エンジニア・全般・学生など

②白内障手術とは何か?がわかる

③白内障手術の参考書として購入

今も医局のデスクに並べて参考にしている本である。1990年代前半,白黒で文字が多い教科書が多かったのに対して,多くのカラーの図が配置され,圧倒的に綺麗でわかりやすかった。しかも,その内容は今も参考にしなくてはならないほど広く,深い,智慧が具わっている。

白内障を嚢外摘出で9 mm強角膜切開して摘出していたものが,超音波白内障手術により3 mm切開で水晶体を摘出できるようになった。この本が世に出回ったころは眼内レンズが6 mmなので,水晶体を摘出したあとに強角膜を6 mm切開してレンズを挿入していた。6 mm切開すると乱視の誘発が無視できない。そこで眼内レンズを折りたたんで3 mm切開からレンズを入れる小切開創白内障手術が登場した。わかりやすいだけでなく,面白く興味が沸いた。視力の統計や,乱視の解析の話はこの本以外,(日本語では)どこにも書かれていなかった。この本をみながら,コンピュータにむかってエクセルの式を作成して,乱視の計算を行い発表した。

この後,分かりやすい教科書が数多く出版されたけれども,この本ほど興味を掻き立てられた教科書には残念ながら出会えていない。

(稗田 牧)

 

論文紹介

Cheung S-W, Boost MV, Cho P. Pre-treatment observation of axial elongation for evidence-based selection of children in Hong Kong for myopia control. Contact Lens and Anterior Eye. 2019; 42(4): 392–398.

オルソケラトロジーによって近視進行抑制効果のメリットを受けやすい小児の対象者を事前に絞り込める可能性がある。

オルソケラトロジーレンズ(OK)による近視進行抑制の有効性について,年齢別に調べた研究。6~<9歳,9~<13歳,13~<16歳を対象に,前半7ヶ月を眼鏡装用期間,後半7ヶ月をOK装用期間として眼軸長の変化を調べた。眼軸長伸長度(mm/yr)を≧0.20 mm(度数で≧1.0 D)をRapidと定義したとき,Rapid progression rateは低年齢ほど高く,OKによるRapid対象者の抑制効果は明らかに高かった。これらの結果を基に彼らが推奨するガイドラインが終盤に記されており,年齢と6ヵ月モニタリング後の眼軸長伸長量に応じ,OK処方によって近視進行抑制効果を得られやすい対象者か否かを判断するフローチャートになっている。処方家にとって大いに参考になる論文ではないだろうか。

(洲崎朝樹)

Haris EM, McGraw PV, Webb BS, Chung STL, Astle AT. The effect of perceptual learning on face recognition in individuals with central vision loss. Investigative Ophthalmology and Visual Science, 2020; 61(8): 2.

中心窩における視細胞の欠損に起因する低視力の加齢黄斑変性患者において社会活動に必要な顔認識機能が知覚学習によって改善することを示す知見であり,基本的視機能の改善はなくても生活の質の向上が望めることを示唆している興味深い研究である。患者の生活の質の向上のために日々活動されている会員に有益な知見と考える。

加齢黄斑変性患者(平均年齢78 ± 10歳)に対して5日間の顔弁別課題の知覚学習を行なったグループ(学習グループ)と行わなかったグループ(学習なしグループ)の顔弁別課題,顔認識課題,そして視機能(固視安定性,視力)の結果を学習期間の前後で比較した(学習なしグループは学習期間の前後に課題のみを行なった)。その結果,学習グループは顔弁別,顔認識課題の成績が有意に向上したが,学習なしグループはどの課題の成績も変わらなかった。一方で,両グループの視機能の評価は学習の有無にかかわらず,変化しなかった。これは,視機能の改善なしに,加齢黄斑変性患者の顔認識という社会活動に必要な視覚認知機能が学習により改善することを示唆している。

(吉澤達也)

J Alan Gambril, Kenneth R Sloan, Thomas A Swain, Carrie Huisingh, Anna V Zarubina, Jeffrey D Messinger, Thomas Ach, Christine A Curcio.

Quantifying Retinal Pigment Epithelium Dysmorphia and Loss of Histologic Autofluorescence in Age-Related Macular Degeneration.

Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019; 60: 2481–2493.

480 nm波長帯の自家蛍光画像は,黄斑疾患における網膜色素上皮変化を観察する方法として広く普及している。自家蛍光画像所見のうち,過蛍光病巣は網膜色素上皮細胞内のリポフスチン貯留に由来すると考えられ,リポフスチンによる細胞障害の指標と考えられてきた。本論文では,摘出眼球の網膜色素上皮細胞を蛍光顕微鏡で観察することにより,網膜色素上皮細胞の内部構造と自家蛍光画像所見の関係を観察した。その結果,自家蛍光画像所見は網膜色素上皮細胞内のメラニン及びリポフスチンが偏在することによる影響が大きいことが判った。これは従来の自家蛍光画像の臨床解釈を一新するものである。そのため,自家蛍光画像に関係する臨床家のみならず,基礎研究者,画像機器開発者にとっても必読の論文といえる。

(三浦雅博)

Hiroshi Uozato and David L. Guyton: Centering Corneal Surgical Procedures,

American Journal of Ophthalmology, 1987, 103: 264–275.

屈折矯正における必読クラシックペーパーとなりました。

屈折手術だけでなく一般の屈折矯正における最適な角膜中心決定法を提案した論文である。1970年代後半から世界的に各種の屈折手術法が登場してきましたが,光学領や切除域・レーザー照射中心などを視軸(角膜反射像)ではなく照準線(瞳孔中心)にセンタリングすべきことを視機能や光学の観点から述べたもので古典的名著となっている。角膜や白内障屈折手術だけでなく通常の屈折矯正(眼鏡,CL,IOL,ICLなど)や角膜形状検査などでも基本となっている。

(魚里 博)

 

 

 
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