色覚は網膜上の錐体細胞からの情報が反対色メカニズムによって処理されることによって生起される。では対象の色の見えは,この神経メカニズムを介してその対象からの光のみにより決定されているのであろうか。
普段我々が色を知覚する状況では物の表面からの反射光に対する知覚が多い。一方で,光源に対しても色の知覚が生じる。もし,両者が同じ分光エネルギー分布を持つ光であれば,錐体細胞にとってはどちらの場合も同じである。そしてその情報のみで色の見えが決まっていれば,両者の間に差はない。しかし,私たちは対象が発光しているのか,それとも物体からの反射光として対象を知覚しているのか,その違いを多くの場合区別できている。この違いは色の見えのモードという概念で説明できることが知られている。ここでは,この色の見えのモード生成機序と物の表面を知覚させる質感に関する近年の知見を紹介する。