2022 年 43 巻 3 号 p. 62-69
目的:全層角膜移植(Penetrating Keratoplasty: PK)術後における視機能の長期的な変化を検討すること。
対象と方法:水疱性角膜症に対するPKの術後に角膜形状解析を経時的に行った症例を対象とした。術後10年までの角膜形状解析におけるフーリエ解析の各成分を後ろ向きに解析した。
結果:124眼112人(年齢:71.3 ± 11.2歳)が対象となった。10年間で拒絶反応は9.7%,移植片不全は30.6%に生じ,縫合糸の抜糸を39.0%で行った。角膜中心6 mm径のフーリエ解析において,球面成分は術後4年以降も緩やかに増加した。一方で,正乱視成分や非対称成分は術後早期から安定して推移していた。高次不正乱視成分は,術後早期に減少し,術後1年以降で大きな変動は認められなかった。
結論:PK術後長期にわたって角膜の球面性は変化し続ける。フーリエ解析による角膜形状解析は,角膜移植術後の角膜乱視の評価において有用であると考えられた。