2025 年 36 巻 1 号 p. 121-127
Ⅱ型糖尿病患者140例において有痛性糖尿病性神経障害 ( PDN ) と無痛性障害 ( PLDN ) の無髄C線維・有髄Aδ線維・大径Aβ線維機能と疼痛の関係を検討した。結果,SUDOSCAN®の電気化学的皮膚コンダクタンス ( ESC ) 値,表皮内神経終末痛覚閾値 ( PINT ) ,および神経伝導検査 ( NCS ) の異常度に正相関を認め,糖尿病では無髄C線維・有髄Aδ線維・大径Aβ線維の機能が並行的に障害されることが示された。小径線維障害群 ( ESC・PINT異常群 ) におけるPDN発生率はSNAP正常群で20%,低下群で40% ( p<0.05 ) であった一方,SNAP振幅はPDN6.9±1.2μV,PLDN群10.6±4.1μVと,PDN群が有意に低下 ( p<0.01 ) していた。以上から,PDNの頻度はC線維・Aδ線維障害にAβ線維機能低下が併存した群で高く,疼痛発生の一因として脊髄後角でのAβ線維疼痛抑制機能低下の可能性が推察された。