2013 年 17 巻 1 号 p. 11-22
目的:男性の尿失禁に起因する皮膚障害の予防にはパッドを用いた従来のケアでは不十分である。そこで本研究は新たに開発したパウチを用いた男性用尿失禁ケア用具(パウチ付き紙おむつ)を使用してモデルおよび健常人実験を行い、おむつ内・外への尿漏れ防止効果ならびに皮膚生理機能へ与える影響を評価した。方法:モデル人形と健常男性を対象にパウチ付き紙おむつの使用またはパッドを陰茎に巻くケアを行い、各ケアがおむつ内・外への尿漏れや皮膚生理機能、温湿度、使用者の主観的評価に与える影響を群間で比較した。本研究は東京大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て行った。結果:モデル実験ではパウチ付き紙おむつ使用群ですべての実験条件で有意におむつ内・外への尿漏れ割合が減少した。健常人実験(N=15)では、パウチ付き紙おむつ使用群でおむつ内への尿漏れ割合が有意に減少した。また皮膚生理機能は、角質水分量がパッドによるケアで鼠径部、仙骨部、殿部で排尿前より排尿後に有意に上昇し、皮膚pHはパッドによるケアで仙骨部および殿部で排尿前より排尿後に有意に上昇していた。使用者の主観的評価は排尿後の履き心地、かゆみとにおいにおいてパウチ付き紙おむつ使用群のほうが有意に良好であった。結論:パウチ付き紙おむつの使用はパッドによるケアよりもおむつ内への尿漏れの発生や皮膚生理機能の変化を抑えることができた。さらに使用者の主観的な評価も高いことから、新たな尿失禁ケア方法として用いることが期待できる。