肥満者では、慢性創傷や炎症性皮膚疾患の増加が報告されている。近年、肥満モデルマウスにおいて、変性した皮下脂肪組織における酸化ストレス上昇を介したコラゲナーゼ発現亢進による真皮コラーゲンの分解が示された。本研究の目的は、ヒトにおける真皮構造変化と酸化ストレスおよび皮下脂肪組織変性との関連を明らかにすることである。対象(男性61名)は、一般企業および一般病院より募集し、BMI<25、25-30、≧30の3群に分類した。真皮および皮下脂肪組織の超音波画像を取得した。また酸化ストレスの指標として、毛根におけるheme oxygenase 1(HMOX1)の発現をリアルタイムRT-PCR法により測定した。超音波画像を基に、真皮の構造は真皮の厚さおよび高エコー斑点の分布から3タイプ(A~C)に分類された。BMI<25では約80%がタイプAを有していたが、BMIが25以上ではタイプBおよびCが増加していた。またタイプB、Cにおいて、タイプAにくらべHMOX1の発現は有意に上昇しており、皮下脂肪組織の変性を有する対象者の割合も増加していた。以上より男性において肥満に伴う真皮の構造変化に毛根の酸化ストレスの上昇および皮下脂肪組織変性が関連することが明らかとなった。軽度の肥満段階から皮膚アセスメントが必要であり、肥満に伴う皮膚疾患などの予防的スキンケアとして、少なくとも男性においては酸化ストレスを標的とした介入が有効である可能性が示された。