日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
原著
ヒアルロン酸を基材とした上皮成長因子含有機能性創傷被覆材の開発:培養系および動物実験における創傷治癒効果の評価
清水 菜穂子山本 昭子黒柳 能光
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2013 年 17 巻 1 号 p. 40-49

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抄録

 本研究では、ヒアルロン酸(HA)を基材としたスポンジ状シートに上皮成長因子(EGF)、アルギニン(Arg)、ビタミンC誘導体(VC)を含有した機能性創傷被覆材の開発を行った。所定量の分子間架橋剤を混合した高分子量HA水溶液をトレーに分注し、その上にArg、VCを含有した低分子量HA水溶液を分注し、凍結真空乾燥により2層性の被覆材(I群:EGF(-)被覆材)を作製した。上記と同様の方法でEGFを含有した被覆材(II群:EGF(+)被覆材)を作製した。ヒト線維芽細胞をコラーゲンゲル内に組み入れた培養真皮を用いて創傷面モデルを作製し、MTT assayで細胞代謝活性、ELISAで血管内皮成長因子(VEGF)および肝細胞成長因子(HGF)産生量を測定した。溶出したEGFが効果的に線維芽細胞の代謝活性を高め、VEGFおよびHGF産生量を顕著に増加した。またSDラット腹部に全層皮膚欠損創を作成して被覆材を貼付し、肉眼的および組織学的に創傷治癒を評価した。対照群として市販のアルギネート被覆材を貼付した。I群およびII群は対照群と比較して血行に富んだ良好な創面が観察され、創面積は減少し、血管新生を伴った肉芽組織形成が促進された。特に、II群はEGFによって炎症反応が早期に終息傾向を示した。以上より本被覆材は、創傷面モデル実験および動物実験において創傷治癒促進効果をもつことが明らかとなった。

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© 2013 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会
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