2019 年 4 巻 1 号 p. 1-7
近年になって,様々な生命現象を一細胞レベルで明らかにしていく取り組みが活発に行われ,極めて稀に存在する希少細胞の特徴づけや同種の細胞間における不均一性(heterogeneity)などを定性的かつ定量的に評価する目的などに利用されてきた.こうした目的を達成するためには,多くの分子を網羅的かつ高感度に分析を行う必要があり,質量分析を利用した方法が効果的である.そこで,本稿では,質量分析を用いた一細胞メタボローム解析に焦点を当て,どのような技術が発展しているかについて紹介する.中でも,一細胞レベルの分析に特化するという目的を,直感的な形で追求して開発されてきたライブ一細胞質量分析(Live Single-Cell Mass Spectrometry)を用いた一細胞メタボローム解析について,希少細胞の特徴づけへの応用例として血中循環腫瘍細胞のメタボローム解析,また,細胞間の不均一性の評価への応用例としてラマン顕微鏡分析との融合による薬物動態評価の二点について最新の成果を紹介する.