人口学研究
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論文
日本における世帯移動の諸様相
大友 篤
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1987 年 10 巻 p. 25-32

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抄録

人口移動は,個人としての移動と集団としての移動に分げることができるが,従来の人口移動研究においては,主として個人としての移動に焦点があてられていた。この報告では,従来,あまり知られていない集団としての移動である家族移動の様相を把握するための一つの手段ともいえる世帯移動の諸様相を明らかにするものである。分析に利用したデータは,主として昭和55年国勢調査の世帯移動に関する結果,及び昭和58年住宅統計調査の世帯主(主な働き手)の移動に関する結果である。分析の結果,主として次の諸様相が明らかになった。(1)最近における世帯移動のモビリティは,個人移動のそれに比べて低い。(2)個人移動と比べて,世帯移動は,短距離移動のモビリティが高く,長距離移動のそれは低い。(3)世帯規模が小さいほど,世帯移動のモビリティは高い。(4)世帯主の年齢別移動率のパターンは,個人のそれに類似しているが,世帯移動の場合,15歳〜24歳の年齢層の移動率は,個人移動のそれを,かなり上回っている。(5)個人移動のモビリティは,近年,低下しているが,世帯移動のそれも低下を示している。(6)世帯移動の45%は"住宅"要因によるのに対して,"就職"や"転勤"のような経済的理由による移動の比重は小さい。(7)個人移動の場合と同様に,世帯移動の年齢別移動理由は,世帯員のライフ・サイクルにおける主要な事件を示している。

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© 1987 日本人口学会
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