人口学研究
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論文
自国生まれ未熟練アメリカ人労働者の国内移動に対する未熟練労働移民の影響 : 多変量解析による評価
リャウ カオ・リー林 季平フライ ウィリアム
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1998 年 23 巻 p. 5-24

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抄録

本稿の主題は,1985-90年間における自国生まれ未熟練アメリカ人労働者の州間移動に対して,アメリカへの未熟練労働移民がどれほど影響を与えたかの評価である。この評価は,1990年センサスの個別データを用いて,nested logitモデルを適用しておこなった。このモデルの主な長所は,州間移動を,移出選択過程(departure process)と目的地選択過程(destination choice process)とに区別できることにある。未熟練労働者とは,高校卒業者とそれ以下の教育水準の人々である。労働市場での交代と補充を見込んで「未熟練労働移民」も「自国生まれ未熟練労働者」も,生産年齢(15歳〜64歳)人口に限定している。主要な結果:「未熟練労働移民」の押し出し(push)効果は,目的地選択過程よりも移出選択過程に対してはるかに強い影響を及ぼし,「自国生まれ未熟練労働者」の移動の目的地選択過程に対する落胆的かつ補充的効果よりも強いことが明らかになった。その押し出し効果は,(1)少数民族よりも白人のほうに,(2)非貧困層よりも貧困層のほうに,(3)15-24歳の年齢層よりも他の年齢層に,強く働いており,(4)貧困白人に最も強く働いている。シミュレーションの結果によると,移民が最も集中しているカリフォルニア州では,もし,移民が5年間に50%増加すると,2人の「未熟練労働移民」が1人の「自国生まれ未熟練アメリカ人労働者」との交代を招くほどの強い影響がみられる。外国から流入した移民の国内人口移動に与える影響は,非常に選択的であることが認められた。本研究の成果は,人口を人種別,教育水準別,職業別などに区分し,それらの国内人口移動への影響を評価することの必要性を示している。

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© 1998 日本人口学会
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