抄録
1990年センサスにおける人口移動の定義変更は,1970・80年センサスに掲載されている人口移動データとの直接的な比較を妨げることになった。しかしながら,本稿で提案する補正方法は,1970・80年センサスの移動データから,1990年センサスの定義に基づいた移動者数を推定するものであり,これによって,異なる定義に基づいた人口移動データの相互比較が可能となる。この補正方法は,多地域人口成長行列を用い出生コーホート別に移動者数を推定する点に特徴がある。補正にあたっては,観測値と推定値を調整するための係数を導入する。本稿では,まずこの補正方法の詳細を述べたあと,1965-70年と1975-80年のそれぞれの期間について,算出された係数が地域間・年齢階級間でどのように変動するかに言及する。ついで,これらの観測値と推定値の,全年齢階級にわたる総計を比較し,さらに,1965-70年,1975-80年,1985-90年の3期間にわたる年齢階級別の地域間移動者数の変化について,概観する。最後に,本稿の意義と問題点をまとめる。