人口学研究
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論文
多相生命表による結婚のライフサイクルの分析 : 1930,1955,1975,1995年
別府 志海
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2002 年 30 巻 p. 23-40

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抄録

生命表形式による結婚の分析はいくつかの方法がある。本稿では離死別からの再婚を考慮に入れた多相生命表形式により,1955,1975,1995年と,戦前の例として1930年の結婚の分析を行った。結婚の多相生命表から得られたライフサイクル指標によると,1930年と比べて1995年は死亡率の低下により平均結婚期間と平均未婚期間の二つが大きく伸張した一方で,平均死別期間と平均離別期間に大差はなく,また1975年以降は平均結婚期間が減少傾向にあることがわかった。このライフサイクルの変化を多相生命表を用いて要因分解したところ,1930-55年,55-75年では平均未婚期間および平均結婚期間の変化に対して死亡率改善の効果が大きかったが,75-95年では主に未婚化と離別・再婚の増加により,むしろ配偶関係間異動率変化の効果が大きくなった。戦前に比べ戦後はとりわけ若年齢の死亡率低下を反映し,死別期間は1975年までむしろ短くなったが,以降は高年齢の死亡率低下のため逆に長くなっている。再婚は期間を通して半数以上が離別再婚である。しかし戦前に比べて戦後の死別再婚確率は減少している一方で,離別再婚確率は増加している。各歳別にみた場合,戦前に比べ戦後の「適齢期」が男女ともに短くなっているという結果を得た。また最近では離別の増加から,再婚者との初婚により中高年齢での結婚期待率・平均未婚期間が男女で逆転している。1930年は戦後のパターンと比べ,40-50歳代での結婚期待率が男女ともに高く,低下がなだらかな点が大きく異なっている。初婚のみが対象だが,戦前と戦後の結婚パターンの違いの一端を示していると考えられる。

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© 2002 日本人口学会
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