人口学研究
Online ISSN : 2424-2489
Print ISSN : 0386-8311
ISSN-L : 0386-8311
論文
育児休業制度が出生率に与える効果
坂爪 聡子川口 章
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 40 巻 p. 1-15

詳細
抄録

育児休業制度が出産確率を上昇させるか否かを理論と実証の両面から分析する。育児休業制度を明示的に取り入れたモデルを用いて,育児休業制度が出産確率に与える影響を分析し,プロビット・モデルを用いてそれを検証する。モデル分析から得られる推論と実証分析の結果は,以下の2点において整合的である。第1に,育児休業制度の導入は出産確率を上昇させる。ただし,第2に,通常の労働時間が非常に長い場合は,その効果は小さい。なぜなら,労働時間が長い場合,育児休業制度があっても,女性は出産退職や出産しないことを選択する可能性が高いからである。このことから,育児休業制度の取得率と出生率を上昇させるためには,制度の導入と同時に通常の労働時間を短縮するか,少なくとも育児休業後の労働時間を短縮することが必要であるといえる。

著者関連情報
© 2007 日本人口学会
前の記事 次の記事
feedback
Top