人口学研究
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研究ノート
多地域モデルと単地域モデルの地域人口推計精度の比較検証ならびに複合モデルの可能性について
飯塚 健太
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2015 年 51 巻 p. 1-17

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抄録

本研究は移動モデルの違い(単地域モデルと多地域モデル)が日本の地域別将来人口推計にもたらす違いを比較するとともに,その結果から得られる応用可能性を考察した。比較検証により,1995年から2000年の都道府県別人口静態・動態統計を用いた推計では期間中仮定値を一定とした場合,総合的には,単地域モデルよりも多地域モデルによる推計のほうが若干ではあるが推計の当てはまりが良い結果となった。但し,年齢階級別または地域別に比較した場合には,モデルの優劣に画一的な判断結果は得られなかったが,地域別に見た場合,単地域モデルは比較的人口規模が多い地域で当てはまりがよく,多地域モデルの場合には,人口流動数が比較的少ない地域への当てはまりが良いという傾向が認められた。次に,それぞれの移動モデルが推計結果へ与える影響の特性を利用し,二つのモデルを組み合わせた複合モデルによる推計を行った。その結果,先の単地域モデル,多地域モデル単独による推計結果よりも当てはまりが良くなり,特に多地域モデルと年齢階級別の比較を行った場合,全ての階級において当てはまりが改善した。これらの結果は,将来の人口移動傾向がある程度予測可能な条件のもとで,多地域モデルを応用して将来推計に用いることで,我が国の人口推計において現在一般的に用いられている単地域モデルよりも高精度の地域推計が可能になることを示唆する。

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© 2015 日本人口学会
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