人口学研究
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論文
日本における性別職域分離の趨勢 ――1980–2005年国勢調査集計データを用いた要因分解――
打越 文弥麦山 亮太
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2020 年 56 巻 p. 9-23

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抄録

本研究は職業構造の変化に着目して,日本における性別職域分離の趨勢について検討する。日本における根強い男女の不平等を理解するための示唆があるにもかかわらず,職域分離に関する知見は限られており,また一貫していない。本研究では,こうした趨勢に関する知見の非一貫性が,(1)職業分布の変化と(2)職業内における分離の変化を峻別してこなかった点に求め,両者を数量化して分けることの重要性を指摘する。本研究では性別職域分離は(1)日本の労働市場のジェンダーにおける特徴を規定していた製造業が衰退することと(2)専門職やサービス職が増加することによる職業分布の相対的な変化の2つによって変化するかを検証した。1980年から2005年の国勢調査を用いた分析から,以下の結果を得た。第一に,日本の職域分離の趨勢は僅かに減少傾向にある。第2に,分離の変化を分解した結果,職業分布の変化によって分離は拡大している。これに対して,性別構成効果は,職業内の分離を解消する方向に寄与していた。第3に,職業別の男女割合から,1980年時点で女性が多くを占めていた職業からの女性の移動が,日本の職域分離の変化を理解する際の重要な要因であることが新たな知見として明らかとなった。

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© 2020 日本人口学会
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