人口学研究
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論文
結婚難の尺度とその適用
安蔵 伸治
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1985 年 8 巻 p. 1-10

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抄録

同時出生集団の規模の変化は,のちの社会経済的状況のみならず,出生,あるいは婚姻といった人口学的諸要因にも変化をもたらす。特に婚姻については,異なる規模の同時出生集団が結婚市場に参入することによって結婚難を生ずる。結婚難の概念は1950年以降,米国において発展したが,その尺度に関しては十分な発展をとげていない。本稿では性比をもとにした尺度と,婚姻率をもとにしたR. Schoenの尺度に関し,その妥当性を考察した。また我が国のデータをもとに数種の尺度を算出し,それらを比較検討してみた。性比の結婚難尺度は,結婚適齢期人口の性比とされるが,従来の考え方は,その適齢期の決定に問題がある。適齢期を一定にし,時系列で比較した場合,結婚における年齢選好の時間的変化ならびに社会的変化をも無視することになるからである。また,性比の尺度は,婚姻における様々な年齢の組み合わせを無視する。これに比べ,Schoenの尺度は,観察しうるすべての組み合わせを考察に入れ算出されるのみならず,男女の独身率(あるいは未婚率)の差を両性の婚姻率と比較することによって計測できるので,結婚難の状況を明確に示すことのできるものといえよう。我が国の場合,どの方法を用いても,1950年代から60年代後期までは,女子の結婚難であった。1950年代の厳しい女子の結婚難は第2次大戦における結婚適齢期男子の損失が大きな原因であり,1960年代後期には,戦後のベビーブーム世代の女子が男子よりも先に結婚市場に参入したためにおこったと考察できる。1970年代以降は,男子が結婚難の状況にある。ベビーブーム世代の男子の結婚市場への参入,そして女子の教育水準の上昇による結婚の延期が原因と考えられる。

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© 1985 日本人口学会
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