日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
ロイシン, リジン, フェニルアラニンおよびメチオニンの過剰添加がヒナの飼料摂取後および絶食後の血漿アミノ酸濃度に及ぼす影響
上田 博史大島 光昭
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1982 年 19 巻 1 号 p. 37-44

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抄録

ロイシン, リジンあるいはメチオニンの過剰添加によるヒナの成長阻害は他の特異的なアミノ酸の添加により軽減される。しかしフェニルアラニン過剰による害作用を緩和するアミノ酸については十分な検討がなされていない。本実験ではロイシン, リジン, フェニルアラニンおよびメチオニンの過剰添加がヒナの飼料摂取後および絶食後の血漿アミノ酸 (PAA) 濃度に及ぼす影響を調べ, さらにPAA ratio およびPAA score を計算し, アミノ酸過剰による害作用を緩和しうる特異的なアミノ酸をこれらの値から推定できるか検討した。
アミノ酸過剰飼料は, L-メチオニンとグリシンを補足した抽出大豆蛋白質を蛋白質源とする10.5% (測定値) 蛋白質飼料に等窒素のL-ロイシン (1.32%), L-リジン塩酸塩 (0.92%), L-フェニルアラニン (1.66%) およびL-メチオニン (1.50%) を等量のコーンスターチと置換して調製した。供試ヒナは8日齢の白レグ雄を用い, 2羽を1群とし各試験区に4群ずつを割りあてて8日間飼育し, 各群のヒナをそれぞれ飼料摂取後 (3時間絶食) および24時間絶食させた後採血しPAA濃度の測定に供した。なおPAA ratio およびPAA score は飼料摂取後 (P) および24時間絶食後 (F) のPAA濃度 (mmoles/100ml) から次式により計算した。
PAA ratio=P-F/アミノ酸要求量×100
PAA score=P/F×100
過剰添加したアミノ酸の飼料摂取後の血漿中濃度はいずれも有意に増加したが, 成長阻害の著しかったフェニルアラニンとメチオニンおよびこれらの代謝産物であるチロシンとシスチンの増加率は, 阻害の小さかったロイシンとリジンに比して大きかった。しかしこれらのアミノ酸濃度は24時間絶食により正常値に復した。イソロイシンとバリンはロイシン過剰に対して, アルギニンはリジン過剰に対して, またスレオニン, セリンおよびグリシンはメチオニン過剰に対して, その害作用を緩和することが知られているが, ロイシンとリジン過剰では飼料摂取後に, メチオニン過剰では24時間絶食後に, 上記のアミノ酸の血漿中濃度は対応するアミノ酸の過剰添加により有意に減少した。したがってPAA濃度からアミノ酸過剰による害作用を緩和するアミノ酸を推定するには, 飼料摂取後と絶食後のPAA濃度の測定の併用が望ましいことが示された。フェニルアラニン過剰がPAA濃度に及ぼす影響は小さく, 24時間絶食後のスレオニンおよびグルタミン酸濃度の減少が有意であった。PAA ratio およびPAA score から算出した対照飼料の制限アミノ酸順位はアミノ酸の過剰添加によってほとんど影響を受けなかった。

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