ウズラ内頸動脈,脳動脈系におけるノルアドレナリン(NA)含有およびアセチルコリンエステラーゼ陽性(AChE)神経の分布•密度について,組織化学的に調べた。NA神経は内頸動脈および主幹脳動脈の全域に緻密な網目からなる高密度な叢状分布を示し,支配密度は内頸動脈吻合部から脳頸動脈にかけて特に顕著であった。これに対して,AChE神経は脳動脈前循環系を形成する内篩骨,中大脳,後人脳および前幹枝遠位部では常に認められるが,NA神経よりも著しく低密度であり,他の主幹脳動脈や内頸動脈では本神経は通常確認できず,存在してもごく少数であった。更にまた,前循環系の主幹脳動脈(主に内篩骨動脈)壁には少数のAChE陽性神経細胞が存在することを興味ある所見として指摘できる。上述ならびに他の所見の統合帰結から,脳動脈系を支配するNA神経は内頸,内篩骨および椎骨動脈経由で頭蓋外から脳動脈系に投射するが,AChE神経は専ら内篩骨動脈経由で投射し,頭蓋外および脳動脈壁ニューロンの双方に起因するといえる。結論として,ここに報じたウズラ内頸動脈,脳動脈系のNAおよびAChE神経の不均衡な支配様相は哺乳類で証明されている両神経による均等支配から大きく異なり,脳循環系にかかわる鳥類あるいはウズラ固有のNAおよびAChE神経調節機構の存在を示唆しているものと考える。