家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
成熟ラットにおける卵子の成熟•排卵に及ぼす性腺刺激ホルモンの影響
II.排卵時期についての細胞学的観察
石橋功青木ひかる
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1977 年 22 巻 4 号 p. 130-138

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抄録

人工昼夜の条件下に飼育したラットに,種々の量の性腺刺激ホルモンを投与して過排卵を誘起した。HCG注射(暗黒開始)後12(8),16(12)および20(16)時間に殺し,排卵数を算定すると共に,卵巣はBouin氏液によって固定した。排卵数を目安として半数(各処置10匹のうち5匹)を選び,パラフィン包埋後約20μの切片とし,Heidenhain iron hematoxylin染色を行った。直径300μ以上の卵胞内卵子について細胞学的観察を行い,排卵時期を検討した。
1.無処置ラットの排卵は,暗黒開始後8時間で殆ど完了するが,過排卵処置のものにあっては排卵時間の相当の遅延ないし延長が認められる。すなわち,殆どの卵子が排卵に至る時間は,PMS10i.u.処置:HCG注射後16(12)時間,PMS20i.u.処置:HCG注射後16(12)時間よりわずかに遅れるが20(16)時間より以前であり,PMS30~50i.u.処置:HCG注射後約20(16)時間と見積られる。従って排卵数の算定は,HCG注射後20時間またはそれよりいくらか遅い時間に行うのが適当と考えられる。
2.直径約300μ以上の卵胞内卵子の総数に対する成熟途上卵と排卵数の合計の割合は, 50, 30, 20, 10 i.u.のPMSに対しそれぞれ同量のHCGを投与した場合において48.2, 35.6, 28.1, 19.2%であり,無処置の場合は15.8%であった。PMSに対するHCG量の減少に伴いこの割合は急激に低下するが,1/2量以上の場合においてその低下度は少なかった(同量投与を100とした場合の指数で92.5~97.8)。このことから,成熟ラットの過排卵誘起には,PMSに対し1/2(少なくとも1/3)量以上のHCGの注射が必要であると考えられる。
3.PMS50, 30および20i.u.を前処置し,1/2量以上のHCGを注射した場合の,卵胞(300 μ<)内卵子の総数に対する成熟途上卵と排卵数の合計の関係は,r=0.787, 0.555, 0.288であった。この結果から,1回に誘起できる排卵数の限界は,卵巣に内蔵する大卵胞の数に大きく支配されることが示唆されるが,この問題については今後さらに検討を加えたい。

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