家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
アクチビンA(EDF)によるマウス"2-cell blok"の解除
呂 容真塩田 邦郎豊田 裕高橋 迪雄
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1990 年 36 巻 2 号 p. 127-132

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抄録
WM-HEPES培養液中の体外培養において2-cell blockが起るとされているCD-1系マウスの1細胞の受精卵を用いて,アクチビンAあるいは赤芽球性白血病細胞赤化因子(EDF)として同定されているペプチド標品の受精卵発生に対する影響を検討した.
PMSG(5IU)とhCG(5IU)を用いて過排卵処置した3~4週令の雌マウスを成熟雄マウスと交配させ,hCG投与19時間後に卵管から受精卵を採取した.次に150U/mlのhyaluronidaseを用いてcumulus massを除去し,3mg/mlのBSAを含むWhitten'smedium中で48時間培養した.アクチビンAは後半の24時間に添加し,その濃度依存の効果を検討した.その結果,アクチビン A 添加群では,16.7%の受精卵しか4細胞へ移行しなかったが,0.1ng/mlアクチビンA添加群では42.9%1.Ong/mlアクチビンAでは83.1%,10.0ng/mlアクチビンAでは39.6%の受精卵が4細胞期へ移行した.
次に,培養液中のアクチビンA存在時期を3時間ずつずらして培養したところ,hCG投与後41~44時間にアクチビンAが存在していた群で4細胞期への移行が高率に観察された.この時間帯は,2細胞期中期に当たり,アクチビン A はこの時期に作用していると考えられた.
また,アクチビンA添加により4細胞期へ移行した胚を仮親に移植したところ,妊娠,分娩を経て正常に発育した.以上の結果から,マウスの2 cell blockはアクチビンAによって極めて高率に解除できること,また,アクチビンAの作用時期は2細胞期中期であることが示唆された.
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© 日本繁殖生物学会
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