抄録
乳牛延べ12頭に対して,排卵後12日の黄体期にPGF2α15mgを投与した後54時間に4群に区分し,I,II,IIIおよびIV群の各3頭にそれぞれhCG500,1,000,1,500および3,000IUを追加投与して,24時間後に授精した.処置後は卵巣の変化,末梢血中Progesterone(P)の消長および受胎成績を調べた.
その結果,PGF2α投与後黄体は全頭において退行したが,III,IV群の各1頭では退行しかけた黄体が排卵後においてもそのまま存続した.排卵はI群ではhCG投与後3-4日,II,IIIおよびIV群では2日に起こり,排卵後に形成された黄体の形状は,III,IV群の各1頭では発育不全,I,IV群の各1頭では嚢腫様を呈していた.排卵後9-10日までの間における血中P値の増加の程度は,IV群の1頭で緩慢であり,黄体が発育不全または嚢腫様であったIII群の1頭とIV群の2頭では2ng/ml以下で低かった.受胎した牛は,II,IIIおよびIV群の各1頭であった.
以上のことから,本処置は無発情牛の受胎促進をはかる方法として応用しうるものと思われた.また,PGF2α投与後に追加投与するhCGの用量は,排卵誘起効果および処置後に形成された黄体のP分泌機能から,1,000IUで十分であることが認められた.