抄録
直腸検査によって卵胞嚢腫と診断されたホルスタイン種経産牛16頭を持続的な思牡狂症状を呈する4頭(GroupI),不規則な思牡狂を発現する3頭(GroupII)そして無発情で経過する9頭(GroupIII)に区分し,30日間にわたる性行動,脱脂乳中プロジェステロン(P1)濃度並びに超音波画像の変化について検討した.1.治療前20日間思牡狂症状を持続していたGroupIは新たな嚢腫卵胞の発育あるいは退縮が認められ,黄体組織が映像化されないにもかかわらず,2頭のP4濃度は顕著な増減を示した.hCG10,000IU投与後10日間に3頭のP4濃度は増加し,2頭の思牡狂症状は消失したが,新たな黄体組織が映像化されたのは1頭に過ぎなかった.
2.初診10日後から思牡狂症状を再現したGroup IIは2頭の治療前のP4濃度が顕著な増減を示したが,いずれの卵巣にも黄体組織は映像化されなかった.しかし治療後思牡狂症状が消失し,P4濃度が増加した2頭では新たな黄体組織が映像化された.
3.治療前20日間も無発情で経過したGroupIIIのP4濃度はいずれも低値で推移し,黄体組織は映像化されなかったが,治療後10日間に明らかなP4濃度の増加を示した7頭の卵巣では嚢腫卵胞あるいは正常卵胞の黄体形成化が認められた.