日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-4
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精巣・精子
低受胎率を示した黒毛和種あるいは正常な個体における凍結-融解精子鞭毛の超活性化運動
*村瀬 哲磨Ismail El-kon向島 幸司原山 洋高須 正規酒井 謙司
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抄録
【目的】黒毛和種種雄牛において,一般精液性状に異常が認められないにも関わらず人工授精後の受胎成績が低下した例が見られ,本種の繁殖に支障を来している。このため一般検査では発見できない異常を調べる新規検査法の開発を目的として,鞭毛の超活性化運動の誘起能力が指標として使用できるか否かを検討した。【方法】受胎率が正常な個体 3 頭のそれぞれ3射出精液(合計9射出)及び低下した2頭(ウシ A および B)の凍結融解精液(ウシ A の3射出およびウシ B の 2 射出)を使用した。精子を洗浄後,0.1 mM cAMP アナログ(cBiMPS)を添加あるいは無添加(対照)の 0.1% ポリビニルアルコール含有 HEPES-緩衝 BO 液に再浮遊し,38.5°Cにて 0~4 時間培養した。1 時間おきに一部を取り運動性を位相差顕微鏡下で観察した。100~200 倍で円を描いて運動する精子で,400 倍にて尾部の振動が左右非対称性である精子を円運動とした。また,移動をほとんどせずその場で激しく尾部を振動させる精子を鞭打ち運動と判定した。運動する全精子に対する円運動及び鞭打ち運動する精子の割合を超活性化運動(HA)率とした。【結果】正常な個体の 9 射出精液においては,cBiMPS 存在下の培養 1 時間後に HA 率が急激に上昇し(平均 82%),4 時間(平均 88%)まで持続した。培養 1 時間における HA 精子のうちほとんどが円運動精子であり,培養 3 時間まで徐々に鞭打ち運動する精子の割合が増加した。一方,低受胎率を示す個体においては,培養1時間後において,ウシ A の1射出精液の場合(17%)を除き,HA 率は 0% であった。また,ウシ A においては,培養 2 時間後に円運動を含む HA 率が上昇し(38~73%),ウシ B においては,培養 2 時間までに円運動がほとんど見られないにも関わらず,2 あるいは 3 時間後に HA 率が上昇する(11~100%)特異な変化が見られた。対照においてはいずれも HA 率は 0% であった。【考察】cBiMPSにより誘起される凍結融解精子の HA を指標として低受胎率を示す精液サンプルを検出できる可能性が示された。
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© 2008 日本繁殖生物学会
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