抄録
【目的】フローサイトメーターを利用した性分別精子の選別技術の発展に伴い人工授精用の雌雄産み分け用選別精液が入手可能となってきた。ウシ性分別精子の顕微授精による産子作出は,1999年Hamano et al. (Biol. Reprod. 60, 1194-1197) が初めて報告したが,性分別には超音波で分離された精子頭部がソーティングに使用されたため,顕微授精による胚発生は低率であった。そこで,本研究では,最近の性分別技術によってソーティングされた運動性のあるウシ性分別精子を用いた顕微授精による胚発生を検討した。【方法】[実験1]Microfluidic Sperm Sorter (MSFF,ストレックス社) による微量精子液(性分別凍結精子液ストロー約1cmカット:約40μL)からの回収精子運動率と精子濃度を調べた。[実験2]MSFFで回収した運動精子を屠畜卵巣由来のウシ体外成熟卵に顕微授精し,胚発生を調べた。[実験3]ホルスタイン種雌牛の経膣採卵によって採取した卵胞卵子を体外成熟させた。次いで, MSFF法によって回収した運動精子の顕微授精を行い,胚発生を調べた。【結果】[実験1]性分別(ソーティングあり)と未性分別(ソーティングなし)精子液のMSFFによる回収運動精子率は各81%と81%,精子濃度(Sperm/1μL)は各107と127であった。[実験2]性分別精子または未性分別精子の顕微授精による卵割率と胚盤胞率は各77%と81%,各27%と29%で有意な差はなかった。[実験3]3頭のホルスタイン種雌牛から採取した総計30個の卵胞卵子を体外成熟培養し,21個(70%)が成熟した。MSFFで回収したX-染色保有精子を顕微受精し,20個(95%)が生存し,10個(50%)が卵割し,8個(40%)が胚盤胞へ発生した。これらすべての胚をバイオプシし,LAMP法で性判別したところ,すべて雌胚であった。