日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-109
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臨床・応用技術
抗酸化機能強化培地がブタ体外生産胚の凍結生存性に及ぼす影響
*中野 和明中山 順樹小川 武甲松成 ひとみ藤原 主斉藤 紗恵子池澤 有加吉岡 耕治星 宏良長嶋 比呂志
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抄録
【目的】ブタ胚は種特異的に耐凍性が低く、凍結保存が困難とされてきた。また、ブタ胚の長期の発生培養は、胚に酸化ストレスを与え、その結果、凍結融解後の生存性低下を引き起こすと考えられる。そこで本研究では、ブタ体外生産胚の発生培地に抗酸化作用を強化することにより、凍結保存後の胚の生存性が向上するか否かを検証した。【方法】NCSU23を基本とする培地でブタ卵丘卵子複合体を培養し、MII期卵を得た。これらに電気的活性化(直流150V/mm、100μsec、1回)を加え、単為発生を誘導した。得られた単為発生胚を無作為に2区に分け、Porcine zygote medium-5(PZM-5;機能性ペプチド研究所)とPZM-5に抗酸化物質であるアスコルビン酸、葉酸、α-トコフェロール、アポトランスフェリン等を添加した抗酸化機能強化培地を用いて、4日間発生培養を行った。得られた桑実期胚をガラスキャピラリーに装着した中空糸膜に吸引し、ガラス化・融解を行った(中野ら、2008)。ガラス化には20%の仔ウシ血清を添加した20mM Hepes緩衝TCM199を基本培地とし、15% ethylene glycol、15% DMSO、0.5M sucroseを含むガラス化液を用いた。融解後は10%の仔ウシ血清を添加したPZM-5を用いて3日間培養し、胚盤胞への発達を調べた。【結果・考察】抗酸化機能強化培地で培養した桑実期胚をガラス化保存したところ、PZM-5で培養したものに比して、融解後の胚盤胞形成率が有意に向上した(80.8% vs. 63.8%;P<0.05)。この発達率は非ガラス化区のそれと同等であった(80.8% vs. 89.4%)。以上の結果から、ブタ体外生産胚の発生培地の抗酸化作用を強化することで、胚の耐凍性を高め、凍結保存後の生存性を向上し得ることが示唆された。
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© 2009 日本繁殖生物学会
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