日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-24
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臨床・応用技術
中国内蒙古自治区在来品種烏珠穆沁(ウジムチン)ヒツジにおけるフラッシング効果の検証
*木村 弥瑛阿拉騰達来永西 修後藤 正和田島 淳史石川 尚人
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抄録
【目的】中国内蒙古自治区では,過放牧による草原退化の抑制技術の一つとして双子生産が課題となっている。演者らは,他の地域と比べてヒツジの双子率が高い哈尓戈壁(ハルゴビ)嘎査(ガチャ)における放牧管理法に着目し,現地調査を行った。その結果,この地域ではヒツジの放牧地を秋に切り替えること,切換え後の塩類集積地に自生する紅沙(Reaumuria soongorica)等の植物は,糖・デンプン含量に富むことが明らかとなり,本現象がフラッシング効果である可能性が示唆された。本研究では,この仮説を検証することを目的として,烏珠穆沁(ウジムチン)ヒツジにおける摂取エネルギーの増加が排卵数に及ぼす効果を調べた。【方法】烏珠穆沁ヒツジ雌15頭に,維持の代謝エネルギー要求量(MEm)の約85%の量の乾草を45日間与えた後,無作為に処理区(8頭)および対照区(7頭)に分けた。処理区においては200%MEm(乾草および濃厚飼料),対照区においては,75%MEm(乾草)をそれぞれ22日間与えた。処理開始の5日前,処理6日目および16日目にPGF2αを投与し,発情終了日1から2日後に排卵数を観察した。処理開始日から毎日,全頭の体重測定を行った。【結果】22日間の実験期間中に,ヒツジの体重は,処理区で3.7±0.5kg(Mean±SEM),対照区で0.3±0.2kg増加し,処理区間に有意差が認められた(P<0.05)。1および2回目の排卵数は,処理区ではそれぞれ1.13±0.12および1.25±0.23,対照区ではそれぞれ1.0および1.0であり,処理区間に差はなかった。一方,3回目の排卵数は,処理区で1.88±0.12,対照区で1.14±0.13となり,処理区間に有意差が認められた(P<0.05)。以上の結果は,烏珠穆沁ヒツジにおいてフラッシング効果が認められることを示しており,その効果は,体重増加時に起こるいわゆる「dynamic effect」である可能性を示唆している。
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© 2012 日本繁殖生物学会
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