日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-102
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生殖工学
無限クローンは可能か
*若山 照彦幸田 尚小保方 晴子野老 美紀子リ チョン寺下 愉加里水谷 英二グェン ヴァン トン岸上 哲士若山 清香石野 史敏
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抄録

【目的】哺乳動物のクローン作出は,優良家畜の大規模な生産や絶滅危惧種の保全を可能にする新しい技術として期待されてる。しかし現在の成功率では一度に大量のクローン動物を作ることは出来ないため,クローン動物の体細胞から再びクローン動物を作り出す連続核移植(再クローニング)技術が必要だと考えられていた。ところがこれまでの報告では,再クローニングを繰り返すごとに出産率は低下し,マウスで6世代,ウシやネコで2世代までが限界だった。この原因は,クローン技術特有の「初期化異常」が,核移植を行うたびに蓄積するためと考えられていたが,成功率が低すぎるため検証できていなかった。そこで今回我々は,最新の技術を用いて再クローニングに限界があるのか確かめてみた。 【方法】我々は2005年にトリコスタチン A(TSA)が初期化を促進し,クローンマウスの出産率を大きく改善できることを発見した。そこでTSAを用いて1匹のドナーマウス(BD129F1)からクローンマウスを作り(G1と呼ぶ),このクローンマウスが3カ月齢になった段階で再びクローンマウスを作製した(これをG2と呼ぶ)。以降これを繰り返した。生まれた再クローンマウスについて,テロメアや妊性,網羅的遺伝子発現などを調べ,自然マウスおよびG1クローンマウスと比較し,エピジェネティック異常が蓄積されるか調べた。 【結果】現時点で27世代,合計645匹のクローンを作ることに成功している。核移植の出産率は1世代目の7%から上昇傾向を示し,最高で15%を記録している。G20クローンの繁殖能力,寿命,テロメアの長さなどに異常は見られなかった。また網羅的遺伝子発現解析により核移植を繰り返しても初期化異常は蓄積しないことが明らかとなった。これらの結果は,再クローニングはほぼ無限に繰り返せることを示している。Wakayama et al., Cell Stem Cell 2013.

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© 2013 日本繁殖生物学会
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