日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-23
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卵・受精
ブタ卵母細胞の体外発育培養液へのエストラジオール17βの添加が体外成熟,卵丘膨潤化および胚発生に及ぼす影響
*久保 直子Cayo-Colca Ilse Silvia宮野 隆
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抄録

【目的】ブタ初期胞状卵胞から採取した発育途上にある卵母細胞は,体外で発育培養後,成熟培養すると第二減数分裂中期(MII)へと成熟するが,成熟過程において卵丘の膨潤化は起こらない(Cayo-Colcaら,2011)。本研究では,ブタ卵母細胞の発育過程で起こる卵母細胞の成熟能力の獲得および卵丘の膨潤化能力の獲得に及ぼすエストラジオール17β(E2)の作用を調べた。また,発育・成熟培養後の卵母細胞を発生培養し,発育培養期間のE2の胚発生への影響を調べた。【方法】直径1.2~1.5 mmのブタ初期胞状卵胞より,発育途上の卵母細胞を含む卵丘細胞−卵母細胞複合体(COCs)を採取し,0~10−4 MのE2を添加した体外発育培養液中で5日間発育培養した。その後,成熟培養し,卵母細胞の体外成熟能力および卵丘の膨潤化能力を調べた。さらにMIIに成熟した卵母細胞をPZM-3培養液中で6日間体外培養し,胚発生能力を調べた。【結果】5日間の発育培養によって当初113.6±0.6 µmであった卵母細胞の平均直径は,125.1~129.5 μmに達した。E2を10−7,10−6,10−5,10−4 Mの濃度で添加した培養液中で発育させた場合,その後の成熟培養によって,それぞれ,58,47,74,49%の卵母細胞がMIIへと成熟した。また,E2無添加の培養液中で発育培養したCOCsでは,成熟培養中に卵丘の膨潤化は起こらなかったが,10–7,10–6,10–5,10–4 Mの濃度でE2を添加すると,それぞれ,44,48,79,55%のCOCsで,卵丘の膨潤化が起こった。さらに,体外で発育・成熟培養し,MIIに成熟した卵母細胞を発生培養すると,発育培養液へのE2添加(10−5 M),無添加において,それぞれ20%,7%が拡張胚盤胞へと発生した。以上の結果から,ブタ卵母細胞の発育過程において,E2は卵母細胞の成熟能力および卵丘の膨潤化能力,胚発生能力の獲得を促進すると考えられる。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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