日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-52
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内分泌
細胞の低密度環境はウシ黄体のエストロジェン分泌を刺激する
*吉岡 伸作本 亮介奥田 潔
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抄録
Hippo シグナルは細胞の増殖およびアポトーシスを調節することにより,器官サイズをコントロールすること,また細胞密度が hippo シグナルを調節する一つの因子であることが明らかにされてきた。最近,我々は hippo シグナルの構成因子である YAP1 がウシ黄体に発現すること,さらに YAP1 の核内発現が黄体初期に高く,黄体退行期に向かって減少していくことを見出した。YAP1 は細胞密度の低い時に核内に局在することが知られていることから,ウシ黄体は黄体初期には低密度であり成長に従い密度の高くなることが示唆される。しかし,ウシ黄体機能と細胞密度の関係については明らかにされていない。黄体は妊娠の成立に必須のプロジェステロン (P4) だけでなくエストラジオール (E2) も分泌することが知られている。そこで本研究ではウシ黄体機能に及ぼす細胞密度の影響を調べる目的で,1) 発情周期を通じたウシ黄体組織における P4 および E2 分泌を検討すると共に,2) 培養黄体細胞の P4 および E2 分泌に及ぼす細胞密度の影響についても検討した。P4 および E2 分泌は共に黄体初期に高く,退行期に向かうに従って減少した。P4 分泌は細胞密度に関わらず一細胞当たりの分泌量に変化は認められなかった。一方,E2 は低密度培養において高密度培養と比較して一細胞当たりの分泌量が高くなった。卵胞からの E2 は子宮内膜上皮細胞の増殖を促すことから,黄体の E2 は黄体内の細胞の増殖に関与するかもしれない。次に低密度培養が E2 分泌を上昇させる機構を調べるために,3) E2 分泌に必須の aromatase 発現に及ぼす細胞密度の影響を検討ところ,aromatase mRNA 発現に差は認められなかった。 本研究の結果より,E2 分泌は細胞密度の低い黄体期初期で高いこと,低密度で培養することにより E2 分泌の増加することが示され,この E2 分泌が黄体期初期における黄体の成長に寄与する可能性が示された。
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© 2013 日本繁殖生物学会
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